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夜の川原に降りてくる列車  作者: たむ


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第23話 森の入口、眠らない道標

風車の丘を越えた先で、二人は古い森に出会う。

その入口には、眠らない道標が立っていた。

 風の丘を少し下ると、風景が一変した。

 背の高い木々が立ち並ぶ深い森が現れたのだ。

 木々の間から差し込む光が揺れ、どこか神秘的な気配を放っている。


 ハルが立ち止まった。

 「なんだか、静かすぎませんか……?」


 確かに、森の前には“音”がなかった。

 鳥の声も、風の音も、すべてが消えている。

 その代わりに、見えない何かが息を潜めているような緊張感があった。


 入口には古びた石の道標が立っていた。

 表面には深い刻み跡があり、そこにはこう書かれていた。


 ――『眠らない森』


 「眠らない……?」

ハルが目を丸くした。


 カイは道標を触り、石の冷たさを確かめた。

 「この森には“夢と現実の境界”があるんだろう。

  眠らないってことは、迷ったら帰れなくなるってことだ。」


 ハルが不安そうにカイの手を握った。

 「こわいけど……行きたいです。」


 「行こう。一緒なら大丈夫。」


 二人は森の中へ足を踏み入れた。


 中は薄暗く、木々の間から差し込む光が細い糸のように揺れている。

 ただ、静かだと思った森は、歩くにつれて少しずつ“音”を取り戻していった。


 ざわ……ざわ……


 木の葉が揺れ、どこかで水の滴る音がする。


 「……だんだん生きてる感じがしますね。」

 「そうだな。森が僕たちを受け入れたのかもしれない。」


 そんな会話をしていると、突然、前方の木の根元が光った。

 光の粒が浮かび上がり、やがて小さな蝶の形になって飛び上がる。


 「わぁ……!」


 ハルが手を伸ばすと、光の蝶はくるりと旋回してから道の先へ飛んだ。

 まるで「ついておいで」と言っているように。


 「案内……してくれてる?」

 「そんな気がするな。」


 二人は光の蝶を追って森を進んだ。

 しばらく行くと、森の奥に小さな泉が見えた。

 その水面には、昼の太陽ではない“別の光”が映っていた。


 ハルが震える声で言った。

 「これ……どこかで見た気がします。」


 カイの胸がざわりと揺れた。

 それは、かつて夜に見た“光の川”にどこか似ていたのだ。


 泉の中央には、倒れた木の橋がかかっている。

 橋の上には、また違う道標があった。


 ――『過去は眠らせるな。進む者だけが越えられる』


 カイは静かに頷いた。

 「ユウがいたら、こう言うだろうな。“行けよ”って。」


 ハルは微笑んだ。

 「僕も行きたい。僕の“今”を見つけたい。」


 二人は橋を渡った。

 橋を渡り切った瞬間、森の空気が一変し、風が吹き抜けた。


 森が息を吹き返したように、光の蝶が舞い上がる。

 それは森の祝福のように見えた。


 「カイさん、出口が見えます!」


 森の出口には、淡い光のトンネルがあり、その先に新しい道が広がっていた。


 眠らない森を越えた二人の旅は、さらに深い物語へ進もうとしていた。

眠らない森を越えたことで、二人は“過去を抱えたまま進む力”を得た。

次の道は、さらに二人の絆を確かにしていく。

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