第22話 風の継承、二人の旅路
ユウの想いを継いだ少年ハルと共に、カイは歩き出す。
風が指し示す先には、新しい旅の始まりがあった。
始まりの街の午後は、いつもより少し澄んでいた。
カイとハルは、街の外れに続くゆるやかな坂道を歩いていた。
並んで歩く影が伸び、風に揺れて寄り添うようにゆらゆらと揺れている。
「旅人さん、ここからどこに行くんですか?」
ハルが無邪気に聞く。
カイは少し笑って、空を見上げた。
「まだ決めてないんだ。でも、“どこかへ行ける”って思うだけで十分だよ。」
ハルは頷いた。
「じゃあ、僕もついて行っていいですか?」
その問いに、胸のどこかが温かく震えた。
──ユウ、お前の想いは、ちゃんとこの子に届いてるよ。
「もちろん。一緒に行こう。」
カイがそう言うと、ハルは嬉しそうに笑い、走り出した。
坂道の先には風車の立つ丘があり、風が絶えず吹いている。
プロペラがゆっくりと回り、きぃ、きぃ、と柔らかい音を響かせる。
丘の上から見える景色は雄大で、街も川も林も、すべてがひとつの物語のように連なっていた。
「きれい……!」
ハルの目が輝いた。
カイもその景色に思わず息を呑む。
夜を越え、列車を降りて、自分の時刻を手に入れた。
その先に広がっていたのは、こんな世界だったのか。
風車の根元に、小さな石碑があった。
そこにはこう刻まれていた。
――“風は受け継ぐ。想いを運び、次の旅人へつなぐ。”
その言葉を見て、カイは確信した。
ユウから自分へ届いたものは、今度はハルへと続いていくのだと。
ハルがぽつりと言った。
「僕ね、時々怖いんです。“大切な人がいなくなる”って。」
カイはゆっくりとしゃがみ、少年と目線を合わせた。
「その怖さは、生きてる証だよ。
君が誰かを大切に思えるってことだから。」
「大切に……」
「うん。そして、その想いは風が守ってくれる。」
ハルは風に手を伸ばした。
風はそっと彼の指をすり抜けていったが、その動きはどこか優しかった。
遠くで鐘が鳴る。
始まりの街の午後を告げる音だ。
「行こうか。」
「うん!」
二人の旅は続く。
風の丘を越えた先に、細い獣道が伸びていた。
そこから先は、まだ誰も知らない物語が待っている。
ユウからカイへ、そしてハルへ。
風が運んだ想いは、静かに旅路を照らし始めた。
二人の旅は、新しい章へと向かう。




