外飼いの犬がいない、令和の里で
今の街に越してきて最初に感じたのは、「犬を飼っている人が多いところだな」だった。
10年ちょっと前、今の街に越してきて、土曜日の午後にショッピングセンターまでの2キロの道。犬を散歩させている人が7組いた。その前に住んでいた街でも偶には見かけたけど、桁違いに多く感じた。
ただし、家の周りを散歩させている人は多いけど、夜に犬が吠える音は全く聞かない。外飼いをしている家が隣の町内会に一軒、あとは見かけない。室内飼いしているのだろうか(犬シールは見かけないんだけど)。
前に住んでいた街では、狩猟用の犬を檻で3頭飼っているお宅が踏切のそばにあって、窓を開けているといつも吠えている声が聞こえた。ご近所さんはうるさくて大変だったんだろうなあ。他は外飼いの犬を見かけた記憶が……、その時点でも暫くなかったんだよ、そう言えば。
昭和の時代、平成の頭までは家の前に鎖に繋がれた番犬を見かける機会はそれなりにあったように思う。私はずっと北海道の積雪地だけど、子どもの時は田んぼの真ん中だったので番犬として飼われている犬は多く見たし、実家でも飼っていた時期があった。街場でも通りかかった家の番犬に吠えられる経験は結構あった。気を抜いている時にいきなり吠えられると、本当にびっくりする。おかげで完全に猫派になった。
その時代、家の中で「ペットとして」犬を飼うのは漫画やテレビの中だったのが、少しずつ知り合いでも室内飼いしている話を聞くようになった。白い小型犬が流行っていたのかなあ、アイフルのCMとか。コンビニなんかにもペットフードが置かれるようになっていた。
現在。番犬、外飼いの犬はほとんど見かけない。見かけても檻で飼うような狩猟犬だったりで、鎖で繋がれている犬は見かけない。トムとジェリーに出てくるブルさんの犬小屋なんて、絶滅した。外飼いの比率は資料によって5%〜15%と幅があるが、間違いなく少数派である(感覚的にはさらに低い)。今、犬はペットショップで40万円とか50万円とか、いやそれ以上するかな、ちょっとしたバイク並みの値段がする財産だから、外飼いなんて怖くてできないのかなあ。
それどころか、検索窓に「犬 外飼い」と入れると「虐待」がサジェストされる時代になっていた。私個人としては、「犬は外で飼うもの」という感覚のままだった。「虐待ってなんの冗談?」と思うのだが、検索結果には色々と書いてある。書いた方の思想信条はとりあえず尊重するが、違和感は否めない。
「ペットとしての犬は○で、番犬としての犬は×」なのかな?
日本の原風景の一部に、犬との生活があったとおもう。少なくとも近代までの日本では。少なくとも農家では番犬を必要とした(そして納屋では猫が鼠を捕っていた)。犬がいれば泥棒や害獣は近寄らない。開拓地、入植地でも犬や猫などの動物の助けを借りて、人は生きてきた。
三毛別事件や石狩沼田幌新事件、札幌丘珠事件など、北海道開拓期の熊害を紐解くと、被害者宅に犬がいたという記録がない。たまたま見た文献から欠落している可能性もあるが、番犬がいればヒグマが寄ってこなかった可能性が考えられる。クマ生息地域内(当時の北海道のほぼ全域だが)に暮らすアイヌ部族は犬(アイヌ犬)と暮らしていた。少なくとも近年までは、犬がいるところ銃の臭いがするところにはシカなど農作物を荒らす動物のみならず、キツネやオオカミやヒグマなどの家畜を荒らす動物も向こうから避けてきたので、番犬は重要な共同作業者だった。
かといって「山から里に降りてくる今のヒグマ・ツキノワグマを避けるために犬を外飼いしましょう!」とするには、既に遅すぎた感がある。
今のヒグマ・ツキノワグマはヒトも犬も恐れない。ヒトの近くには餌があるし、犬はヒトが近くにいるサインになっている。ヒトや犬に酷い目に遭わされた経験がないし、その経験がない親熊に育てられた仔熊は餌優先で里へ出てくる(奇しくも今日、札幌市中央区円山西町で、0歳のヒグマが単独で出現し、駆除された)。特に今年は、犬ごと襲われる事例が頻発している。犬を怖がらないのか、怖がるよりも餌ゲットのほうが切実なのか、このままでは犬を怖がっていた個体まで怖がらなくなる可能性が出てきた。
ここまででなければ、ヒトと熊の居住域の境界で犬を外飼いするとか、またはドッグランを設置して犬の臭いを強くつけた場所を作れば、熊の溢れ出しを防げたのかもしれないのだが。
数年前、迷い犬を保護した(というか警察に保護してもらった)。しかし保護すると保健所に預けられることになるので、保護するかどうか、警察に通報するか悩んだ。「首輪をしていなかった」のだ。もし捨てられた犬ならば、2週間後には毒殺となってしまう。犬が嫌いな私でも、躊躇した。
「保護」にしたのは、雑種ではないペットショップで買ったら何十万もしそうな犬だから飼い主が探していて、警察に届を出すことに賭けた。保護後すぐ、地元の保健所の「迷い犬」に登録され、1週間後、リストから消えた。元の飼い主に引き取られた、と信じたい。
ペットでも番犬でもいいけど、最低限、必要な予防注射をして、首輪に鑑札をつけて置いて欲しい。そして今はICチップ埋め込みが義務化されているので、きちんと登録しておいて欲しい。上記の迷い犬(首輪なし)は、ICチップ義務化前夜だった。




