第4話〜久方ぶりの再開!お久しぶりです!〜
橘side
『…て…きて…』
微睡みの遠くから声が聞こえる
『…だよ…』
(まだ眠いのに…)
『…ないと…スして起こしちゃうぞ〜』
(後5分…)
『フヒッ…キ…キス…し…』
(そういえば今日は…)
「だぁぁぁぁぁぁぁ!」
『きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!?』
暖かい布団から飛び起き、すぐさまに着替えを始める
今日は魔界に来てから半年が経った頃
本来の橘圭佑の時間軸ならちょうど裏切った頃だろう
しかし、今は完全敵対ルートに入っているため、何も気にしないで実験に集中できた
だが、今日という今日は人間界に帰らなければ行けなかったのだ
「姉ちゃんの誕生日!」
そう姉ちゃんの29歳の誕生日なのだ
これはほぼ毎年行っており、1度忘れた時にこっぴどく怒られ、1日姉ちゃんの召使いのようなことをさせられたのだ
『………お姉ちゃん?』
「ああ…言ってなかったっけ?」
『うん…私以外にお姉ちゃんがいるなんて聞いてない』
「人間界でお世話になったんだよエウルカ」
エウルカ・レルリック
この前の食事会に居なかった最後の怪人であり、根っからの引きこもり
怪人のブレインであり、怪物化の薬などを作ったのも彼女である
「じゃ!行ってくる!」
『何時に帰ってくる?』
「まぁ、数日は開けるよ」
『そんなに…?』
「ごめんな…」
そのまま部屋を出て、魔界から人間界に繋がる扉へと向かう
『どこに向かうのですか愛しい子よ』
1番見つかりたく無い怪人の声に足が止まる
実は人間界への外出はマザー…アリス・レルリックに申請しなければ行けないのだが、大体許可されたことがない
『まさか…無許可で外に?』
「あ…その…はい…そうです」
有無を言わせない視線に白状してしまう
しかし、思っていた言葉とは違う言葉を投げかけられる
『そうですか…いいでしょう』
「へ?」
『1日くらいならば外出を許可します』
いつもとは違い外出を許可される
どんな風の吹き回しかと疑心暗鬼になっていると、アリスは手を振り、従者に合図をする
『しかし、あることをしてもらいたい』
従者が抱えてきたのは赤子
タオルケットに包まれながらすやすやと眠る姿は愛おしかった
『その子を育てろ』
「は?」
『1日と言ったが…1週間の外出を許可する』
いつの間にか背後に扉が出現する
『その子供は1週間もあれば成熟する。育て方は任せる。まぁ、良く育てろよ?』
そのまま扉に吸い込まれ、自室のベットに座り込む
下の階からドタドタと足音のような音が聞こえてくる
「圭佑!?」
そこには髪もボサボサ、目の下にクマがたっぷりとある姉ちゃんの姿が
「あっはは…ただいま姉ちゃん」
げんこつの音と説教が朝方まで響いた
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アリスside
『お母様…』
『レックか。どうかしたのか』
『いえ…あの人間に任せてよかったのかと』
レルリック家の長男…レック・レルリックはそう言った
しかし、その言葉には懐疑ではなく、薄らと心配が感じて取れた
『ケイスケを心配しているのか?』
『…いえそういう訳では…』
この半年でケイスケは随分家族たちと仲良くなっていた
その中で彼を家族たちも家族だと認め、気をかけるようになっていた
『ケイスケなら大丈夫だろう。奴なら育て上げるさ』
『それに…』
後ろの天幕に視線を向ける
『君のシナリオ通りなら…彼は無事なのだろう?』
そこに控えている人物に問いかける
『なぁ…予言者殿?』
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橘side
あれからこってりと絞られ、疲れきった体でベットに寝ていた
この疲れは説教だけでなく、1週間に及ぶ育児も関係していた
あの時小さかった赤ちゃんは花音と名前をつけ、いつの間にか大きくなっていた
エウルカからのメッセージによると1週間で 18歳程度の体になるらしい
しかし、ある問題点も乗っていた
「ね〜遊ぼ〜」
俺の腕を抱えながら引っ張ってくる
そう知能があまり芳しくないのだ
知能と言うより情緒と言えばいいのかかなり子供っぽい
「分かったからリビングに行ってな」
「は〜い!」
そのままパタパタと走っていく
俺も背伸びしそのまま部屋から出る
そして姉ちゃんと一緒におやつを食べている花音の元に行く
「ねぇパパ!この前ね私と同じ顔の女の子と会ったんだよ!」
「へ?」
「あのねあのね私が遊んでるのをやめろ!って怒鳴ってきたから怖くて倒しちゃった!」
「そっか…怪我は無い?」
「うん」
膝に倒れ込んできた花音の頭を撫でながらストーリーを思い返す
(確かに花音は獅子音奏音に似てるしそれを考えて名前を付けたけど…まさかこんなに早く遭遇イベントが起きるなんて)
人間界と魔界は時間の流れが同じであり、半年経ったということはマスクドソルジャー側は第二強化形態が一通りの活躍をしたところだろう
(てことは…もうすぐあれを使う時間か)
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金島side
「鏡さん…奏音ちゃんの様子は…」
「ひたすら自分ではないと否定している」
「確かにあの場には奏音ちゃんが2人いたんです!それでもう片方の奏音ちゃんが…悪い奏音ちゃんが色んなものを壊してたんですよ!」
「だが…それを証明する手立てがな…」
悔しさから歯を食いしばる
あの時、確かに奏音ちゃんとは同じ顔の別人がいた
それなのに2人いることの目撃証言も無く、ただ同じ顔だからという理由で奏音ちゃんは今牢屋に入れられている
「緊急通達!緊急通達!」
鏡と話し合っていると一般隊員が室長室に走り込んでくる
「怪人が出現しました!」
「それだけなら現地にいるソルジャーを派遣すれば良いだろう。そこまで急を要する事態が起きたのか?」
「はい!現地に向かったソルジャーが全滅!応援に向かっているソルジャーも厳しい戦況です!」
事態は急を要するようで鏡は私の方へと向き直す
「金島、行けるか?」
「はい。では準備してきます」
室長室から退室し、自身のロッカーへと向かう
「はぁ…」
このごろ怪人の動きが活性化してきており、マトモに休みが取れない
マスクドソルジャーになれるのは今のところ日本では5人しかいないためそこも拍車をかけているのだろう
しかし、今の憂鬱はそれだけではなかった
「圭佑くん…」
半年姿を見ていない彼
もしかしたら怪人に誘拐されてしまったのかもしれない
その末路を想像し、頭から追い出す
「ダメダメ…今はそれよりもやることがあるんだから」
ドライバーを持つ
「さぁ…行こう」
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橘side
(さて…今日はあのイベントか)
マスクドソルジャー最初の負けイベント
今までは片方が負けても片方が倒すなど完全な敗北はなかった
しかし、今回の相手はレック・レルリック
レルリック家の長男であり、武力で言えば怪人の中でも最強である
そしてレルリック家のみが持っているターンドライバーで理性のある怪物態に変態している
「チェンジ!如律令!」
相対するは近頃開発されたであろう量産型であるソルジャー
マスクドソルジャーよりは弱いだろうが怪物との戦いには有効だった
『ぬるい!』
レックの鎧にキックを防がれ、足を掴まれるソルジャー
『じゃあな』
「っ!?ぐああああああ!?」
そのまま頭握り、力を込める
それだけでスーツは割れ、生身の頭が剥き出しの状態になった
酒呑童子…鬼の怪人であり、怪力と類稀なる戦闘センスが特徴である
「やめろ!」
横からレックの腕に銃撃が行われる
そこに居たのはマスクドソルジャードーナツだった
「そこまでよ怪人!」
『ほう…お前が…マスクドソルジャーか』
「ここで終わらせる!」
そのまま殴り掛かるドーナツ
レックも避けずに殴り合う
高い防御力と怪力を活かしたカウンター戦法に対してドーナツは高速で動き防御の隙を突いていく
【チェンジ!】
(あれは…)
【グレイ!ギア!】
【グレイギア!】
先程までのエンジンの面影を残した赤い形態から一変し、歯車のような灰色の形態に変化する
「はぁ!」
繰り出されたパンチはレックに命中すると鎧をガリガリと削り、壊そうとする
『ハハッ!やるじゃないか!』
後ろに下がったレックは剣を複数呼び出すとドーナツに向かって射出する
「そんなもん!?」
そのまま激しい戦いへと転じる
地面を泳ぎ、奇襲をするドーナツとカウンターを着実に決めるレック
両者の攻防は一進一退であるように見えたが…段々とドーナツの装甲が壊れていく
『もう装甲が残り少ないじゃないか!』
「うるっ!さい!」
そう言うとドーナツは3つ目の音溝へと芯を合わせる
【チェンジアップ!】
低い体勢を取り、そのまま地面に潜る
『まるでモグラだな!』
レックは地面に剣を刺し、剣山のように変化させる
しかし、剣山にはドーナツは突き刺さって居なかった
【急急如律令!灰被歯車一撃!】
「1体1なら負けない!」
必殺の一撃がレックの顔面に振るわれようとした瞬間、ケイスケは飛び出し、片手で必殺を受ける
「!?」
『ふっ…よくやったケイスケ』
そしてそのままドーナツを殴り飛ばす
「キャッ!?」
ドーナツは辛うじて受身をとるが、そのまま転がる
「久しぶりだな正義の味方?これで二対一だ」
こんばんは!バラッパーです!
ちょっと展開が早いかもしれませんが…ご容赦ください
次もお楽しみで!