第2話~サメの恐怖!俺に近づくな!~
圭祐side
「すまないが断る」
「…ヘッ?」
「ごめんね~」
金島の提案にNOと言い、ビルから飛び降りる
ビルの屋上から驚いたような表情をしている金島を尻目に横の一軒家の屋根に着地し、走り出す
「流石に自分から死亡ルートに入るような間抜けにはならないよ~」
もう生存ルートの目途は立てているのだ
その生存ルートは完全敵対ルート
TV放送されていた時の橘は仮面寮に入りながら怪人にも手を貸すことで二つの実験結果を手に入れようとしていたために殺された挙句生きる屍に改造されたのだ
しかし、その後発売されたゲーム版で2兆通りのうちたったの1つのルートだけ生存ルートがあった
それはバグ技などを使うものではなく、1週目の知識を使った2周目で仮面寮と完全に敵対するルートだった
このルートでは人の心を捨てる選択肢が多く、完遂することですら難しい
しかし、完遂したときに唯一の生存ルートを見ることが出来る
俺はこのルートを自力で見つけ、完遂したからこそこのルートで生き残れることを知っている
「まあ…このルートを行くために必要な場面の選択肢も覚えているし…今回のような場面外の寄り道くらい大丈夫だよな」
そのまま俺は帰路を急ぐ
「多分姉ちゃん相当キレてるだろうな…」
想像したくもないことを考えながら帰る足を早めた
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金島side
「………ええ…」
先ほどまで目の前にいたはずの男はビルを飛び降り、なおかつもう見えないところまで走り去っていた
しかも生身で
「…フフッ…アッハッハッ!」
思わず笑いがこみあげてくる
久々に腹を抱えて笑う
「あ~おもしろい」
金島の変身するマスクドソルジャードーナツは車と犬を結んだフォームであり犬の嗅覚や身体能力と車の機動力を併せ持つ
その嗅覚はほぼ視覚と言っても過言ではなく、ファイヤーモンスターの火の壁で妨げられていながらも屋上の状況が8割ほど把握出来ていた
だからこそ生身で怪人と渡り合った橘が無傷であることを訝しんだし、それほどまでの戦力があるならばと仮面寮に勧誘した
仮面寮…マスクドソルジャーが所属する公的機関であり、現代のなりたい職業堂々の1位である
それに加え、その中でも人気の高い方である自分からの招待にNOと言い放った橘にますます興味が湧いてくる
「フフフッ…必ず仲間にしてあげる」
怪しく笑う金島のポケットにあるスマホが鳴る
「はいはいもしもし…あー課長どうしたんですか?はいはい…早く帰って来いと…分かりましたすぐに行きますよ…はいそれじゃ~ああちょっと待ってください。ちょっと頼みたいことが…はい…ある男の人を探してほしくて」
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橘side
「~だいたいアンタはねぇ!お姉ちゃんが心配してるのに~」
自室の窓から帰宅した後、自室に蓄えていた食料を食べている時に姉ちゃんが襲来
そのままげんこつからの正座をさせられ、数時間説教されている
いい加減足も痺れてきた
「また違うこと考えてるね!」
またげんこつが落とされる
頭もクラクラしてくる
「まぁ…15発とげんこつしたし…今回は許してあげる。さ!ご飯食べよ!」
先程までの怒気を感じさせない雰囲気で手を引っ張り下の階への向かう
「ちょっと待っててね〜今温め直すから〜」
キッチンまでパタパタ走っていく姉ちゃん
俺はソファに座り、TVをボーッと見つめる
そこには今日の怪人による事件が報道されていた
そして、解決した人を探している旨の報道とともに俺の写真が張り出された
「はぁ!?」
「何どうしたの〜」
「いや何でもない!」
TVの局を変える
ほのぼのとした動物系のTVが流れる
「あらいいじゃない♡猫ちゃん可愛い♡♡」
頼りがいのある姉ちゃんだが、猫の画像を見せた途端骨抜きになってしまう
信頼している俺の前だけであるがそれでも話を逸らしたい時に使える
俺は猫に夢中になってる姉ちゃんを意識外に追い出し、俺は先程のTVの報道を思い返す
「俺の写真…だよなあれ…」
俺のまだ小さな頃
明らかに盗撮された角度からの写真
そして連絡先が仮面寮になっている点
明らかに金島が関わっている
「はぁ…てか著作権とかどうなってるんだよ」
そんなことを考えながら夜ご飯のタコライスをかきこむ
「こら!そんなかきこんだらダメだよ!」
猫トリップから帰ってきた姉ちゃんが叱ってくる
今はこの幸せを享受しようと思考を辞め、お代わりを貰う
「やっぱ姉ちゃんのご飯は美味しいなぁ」
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金島side
「見つからない?」
「ああ…まぁ、残念ながらな。それよりもまさか貴様も彼を探しているとは思わなかったがな」
仮面寮本部で金島は今、直属の上司である鏡蒼華と話していた
蒼髪に銀色のお面で上半分の顔を隠した女性
放送で橘のことを言うように頼んだ結果、何故か彼女の持っていた写真も一緒に流された
「というか…なんで彼の写真持ってるんですかてかいつの写真ですか」
「それは…昔の写真だからな…」
鏡はモジモジしながら答える
「辞めてくださいよ同性のしかも上司のモジモジなんて気持ち悪い」
「なんだとお前は減給だ」
「嘘じゃないっすか♡可愛いですよ♡」
「はぁ…相変わらず性格の悪い」
「それはアンタもでしょ」
「まぁいい。今は新しく起きた事件だ」
鏡はテーブルにある画面に映し出されている複数の顔写真を見ながら言う
「水上での刺殺…しかもまるで見せつけるかのように…惨い」
「十中八九怪人の仕業だろうな」
「私が行きます」
「今回は水型の敵だが大丈夫か?」
「ええ…秘策があるんです」
金島はポケットからひとつの陰ディスクを取り出す
「フッ…ならいい」
鏡に背を向け、金島は会議室から退出した
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橘side
「さて…この後はどうするか…」
俺は今、自室である壁にぶつかっていた
それは変身アイテム作りの壁であり、最大の難関だった
マスクドソルジャーは色がモチーフの陽ディスクと動植物や機械などがモチーフの陰ディスクを結ぶことで変身出来る
陽ディスクには神話生物、陰ディスクには概念という貴重なディスクがあるが、これらは稀にしか生成されない
そして、今橘が持っているのは陰ディスクのみ
陰ディスクのみでは変身できない
「でもなぁ…今は問題ないとしても終盤になった時に変身出来ないと詰むんだよなぁ」
インフレが進んだ終盤では主人公のソルジャーでも最終フォームでなければ戦うことすら不可能だった
「それに…途中で変身出来るようになっても販促帰還過ぎたらやられるんだよなぁ」
そう…本編時空の橘圭祐は変身を果たしたが販促期間が約2週間で終わり2号ソルジャーに叩きのめされ死亡した
その後のゾンビ状態で変身した新ソルジャーでも約2週間で死体に戻された
「あとは…あれをやるしか…」
そう思ったところで警報がなる
これは怪人警報だった
「怪人…このタイミングなら…あいつか」
サメ怪人水鮫
名の通りサメの怪人であり、水中から船に乗っていた人間に向けて銛を投げ、殺害していた
「こいつのディスクがあれば…」
ディスクの入手経路は2つ
1つ目は自身と適正の高いディスクの飛来を待つ
これは他人が倒した怪人から生成されたディスクの飛来であり、運要素が著しく高い
2つ目に自身で倒した怪人から生成されたディスクだ
これは意外に簡単であり、レアディスクでなければ生成率も高い
「はぁ…狩るか」
俺は服を着替え、外に出る
姉ちゃんに見つかれば十中八九怒られて縛り上げられるだろう
また自室の窓から出る
外は暴風雨
屋根へと飛び移り、近くの海岸に着く
そこにはマスクドソルジャードーナツと交戦している水鮫が居た
「俺も混ぜてよ〜」
そこに剣を振るいながら参戦する
「なっ!?貴方は!」
『誰だァ!?私の狩りの邪魔すんのわよォ!』
水鮫は女性型怪人だった
全身サメのような灰色の肌であり、サメの被りものを被っているような見た目だ
『ま!お前で良いかァ!』
「避けて!」
ドーナツが悲痛な叫びが上げながらこちらに駆け寄ってくる
それよりも先に水鮫の銛が飛んでくる
俺はそれをすり上げ、軌道を逸らしそのまま水鮫に突撃する
『何ィ!?』
「じゃあね〜俺の糧になってね〜」
そのまま剣で水鮫を切り裂く
『良い男じゃねェか…』
その言葉を遺し、水鮫は水になる
「チッ…」
ディスクは生成されなかった
それを見た俺はその場を後にしようとする
「フフッ…」
「ッ!?」
謎の笑い声と共に足元に銃弾が放たれる
俺は飛び退き、ドーナツと相対する
「どういうつもりかな〜」
「やっぱり私の目は間違ってなかった…やっぱり貴方は仮面寮に来るべきよ」
ハツラツとした雰囲気からは想像できない重苦しい空気が溢れ出してくる
「さ…一緒に行こ?」
「嫌だな〜」
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次のお話もお楽しみに!