第1話〜ぶっ飛ばせ怪人!困ったぜ転生!〜
「ハアッ…ハァッ…誰か助けて!」
女性が森を走る
ボロボロになりながらも駆け抜けていく
『ギャハハ!逃げても無駄だ!』
後ろから追いかけるは全身黒づくめであり、上半身に蔦の鎧を纏った男のような人影
怪人…人々に危害を及ぼす敵であり、常人の身体能力や市販の武器では傷1つ付けられない
「嫌ッ!誰か!助けて!」
ついに怪人の伸ばした蔦が足に絡まり、宙ぶらりんになる女性
至る所が傷ついており、随分といたぶられたことが分かる
吊し上げた女性を段々と近づける怪人
ゆっくりと…まるで女性に死が近づいていることを教えるように
「やめて!いや!嫌〜〜〜〜〜!」
「そこの怪人!その手を離しなさい!」
怪人の後ろから高すぎないハスキーボイスが響く
それと同時に蔦が切られ、目の前に近づいていた女性が消える
「大丈夫?」
「はい…ありがとうございます…」
「ここで待っててね…今怪人を倒すから」
『お前は!?まさか!街には出てないはずなのに!なぜバレている!』
「答えは単純よ!助けを求める人が居たら!私たちは何処でも駆けつける!」
目の前にいる人影…黒いスーツの上に赤い装甲を持っている
名をマスクドソルジャー
犬と車の面影を残している見た目をしている
世に蔓延る怪人を倒す兵士であり、公的機関に就職している公務員である
『キャハハ!国家の犬が!お前ごとき、俺が倒してやる!』
そう言いながら蔦を絡め、纏め、ドリルのようにする
そして、目の前にいるマスクドソルジャーに向けて放つ
「ふざけないで!あなたに私が負けるはずない!」
マスクドソルジャーもドライバーを操作する
ターンテーブルのようなドライバーに付いているカートリッジを動かし、1つ奥の音溝に合わせる
【チェンジアップ!!】
『死ねぇぇぇぇ!』
怪人が蔦のドリルをマスクドソルジャーに向けて放つ
【急急如律令!赤脚蹴撃!】
「はァァァァァ!」
蔦のドリルを貫き、さらには怪人の胸に飛び蹴りを叩き込む
『グァァァァ!?』
怪人の体に、轢かれた後のようなマークが浮かび上がる
『この…俺…が…お前は…誰だ…』
「私はマスクドソルジャードーナツ…怪人を滅ぼす正義の味方よ」
怪人は爆散し、夜だった空は昼のように明るくなった
「さて…被害者も救助されたし帰りますか」
……………………………………………………………………
30XX年…世界を未曾有の災害が襲っていた
いつかから出現した存在…怪人
常人を超えた力を行使し、人を襲っていた
しかしある時、ある博士が装置を発明した
ソルジャーシステム…動物と機会のディスクを一対組み合わせて変身する
マスクドソルジャーが怪人を倒し、一気に人間は勢力を持ち直した
そしてマスクドソルジャーは国家公認の兵士となり、今では人気職業となった
「…そして…怪人は人の目に見つからないように人を攫い…マスクドソルジャーは怪人を倒し人を救う…はぁぁぁぁ…そのまんまじゃねぇかよ」
俺…橘圭祐は今、ボロボロの廃墟の屋上で頭を抱えていた
前世でやっていた特撮ヒーロー「マスクドソルジャードーナツ」の世界に転生して早18年
親は死に、今は師匠と慕っている女性と暮らしている
「まぁ…結構辛い過去だと思うけど…今はそれどころじゃないんだよな…」
そう…今はそれどころでは無いのだ
今転生した橘圭祐というキャラ…最初は善人として主人公や2号ソルジャーを助ける所謂お助けキャラだったが…終盤にして一転、色々な事件の糸を引いていたことが明らかになり、主人公に倒される運命なのだ
そこから擬似ソルジャーだったのが仮面ライダーになり、死亡後も怪人に改造されるという悲惨な未来が見えてるため、橘圭祐は頭を抱えているのだった
「いやいやいや…だってよ?こー言うのって主人公に転生すんのが普通じゃん!テンプレじゃん!なんで橘圭祐なんだよぉ!」
頭を掻きむしり、地面に転がる
そうしていると、ポケットに入っているスマホが鳴る
スマホを見ると「鏡麗華」の名前が
この鏡麗華という女性は10歳の差しか無いにも関わらず、当時7歳で両親を失った橘圭祐を引き取り育ててくれた姉のような人物であり、今も一緒に暮らしている
立ち上がり、電話に出る
その瞬間にスマホから飛び出そうな程の大声が響く
「圭祐!?今どこにいるの!早く帰ってきなさい!」
「姉ちゃん!そんな大声出さないでよ!もう帰るから!」
「本当!?あと何分で帰る!?」
「10分で帰るよ!他に用事ある!?無いなら切るよ!」
「ちょっと待ちな…」
ツー…ツー…という音とともに電話が切れる
「はぁ…美人なのにやたら大声だからモテないんだよ…」
スマホをポケットにしまい、そのままビルから出る
怪人によって壊された街、そこをスタスタと歩いていく
(さて…どうやれば死亡エンドを避けられるか…)
思考を戻し、自身の末路に思考を巡らせる
終盤になり、1号ソルジャーの最強フォームの誕生の踏み台とされ、敗北
先ほど言った通り、共犯関係にあった怪人に改造されて死亡、意思なきゾンビになってしまった
「…まぁ今考えても意味ないか。今は姉ちゃんの手料理を食べたいし早く帰るかなぁ」
夜のネオンに塗れた街並みに入る
しかし、夜の街にしては騒がしかった
「なんかあったのか?」
その疑問はすぐに晴れることになる
奥のビルが大爆発し、焔が昇る
「マジかよ…今日は7/14日…てことはあのイベントかよ…!」
主人公…マスクドソルジャードーナツでもある金島蜜李との初接触イベントが起こるのがまさに今日であった。
火の怪人であるファイヤーモンスターが暴れている時に街中ですれ違うだけという誰にでもあるイベントだが、そこが橘圭祐の破滅の始まりだった
金島は何故か顔を覚え、メインストーリーに巻き込まれるになるのだった
「まさか今日なんて…日付は公開されてたがまさか今年だとは思わねえよ」
奥で溶けるビル群を眺めながら必死に場面のスチルを思い返す
スチルは金島sideからだったが、Bar色島の看板が見えた
周りを見回し、少し先に同じ看板が見える
「ならこっちから進まなければ会わねえか…ならこっちから行けば…」
人の流れをかき分け、横の路地裏に入る
そこを進み…曲がり…進み…もう少しで抜け出しそうなとき、頭にある声が響いた
”誰か…助けて…”
足が止まる
これは…知らない
”誰か…お母さん…お父さん…”
ストーリーにも無かった一幕
恐らくマスクドソルジャーが救った大勢の命の裏に隠された少数の犠牲だろう
「俺には関係ない…関わったら死ぬんだ…」
そうだ知らない奴のために命なんてかけるわけが無い
このまま抜ければ警察も…
”死にたくない…”
「…」
路地から抜けようとしていた足を止め、踵を返す
そしてビルの壁を足場に飛び上がり、声のする方へと向かう
そこには炎鬼の手にかけられそうなら小さな子供が居た
「ちょっとお邪魔するよ」
手に持った大剣を振るい、炎鬼の手を斬る
『ッグ!?誰だ!』
炎鬼はすぐに飛び退き、俺の方を向く
「ただの一般人だよ。それ以上でもそれ以外で無い」
『ハッ!マスクドソルジャーでも無いのか!なら死ね!』
飛んでくる火の玉を空中に現れたナニカで防御する
『ッ!その力は!お前も!』
「君たちみたいなのとは一緒にして欲しくないな」
そう…橘圭祐には1つ秘密があった
それは元々彼は半人半怪人であり、能力を人間態でも使用可能である
今はその能力を使い火の玉を防御したのだ
目の前で呆然としているファイアーモンスターを尻目に子供を抱える
『なっ!待て!』
「待たないよ!それに…お前の相手は僕じゃないんだ」
【チェンジアップ!!急急如律令!】
「正義の味方だからね~」
【車弾銃撃!】
『グッ!?アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?』
八卦の模様が浮かび上がった後、ファイアーモンスターは消え去った
「大丈夫?」
ソルジャーの装甲がほどけ、中から赤髪ショートカットの美少女が現れる
「…ええ何とか」
「嘘ね…息切れもしてない。ケガもない…アナタ何者?」
明るい髪色やはつらつとした雰囲気からは考えられない冷たい視線が向けられる
その視線に言葉が詰まってしまう
「やっぱり怪しい…貴方もここで…」
また金島がドライバーに手をかけようとしたとき、腕の中から子供が飛び出した
「やめて!お兄さんは私を助けてくれたの!ヒーローなの!」
手を精一杯広げ、橘を守るように立ちふさがる
それを見た金島は少し戸惑いながらもドライバーから手を離す
「そっか…ごめんね!君のヒーローに悪いこと言っちゃって」
「ううん!大丈夫!」
金島は先ほどの冷酷な目つきからは考えられないほどにこやかな笑顔で子供を撫でる
そしてすぐに救援班が到着し、子供はヘリで病院に運ばれていった
何故か俺と金島を残して
「ねえ…」
「何かな…僕に他に聞きたいことでも?」
独り言以外での口調で話しかける
橘そのままの人を食っていそうな飄々とした話し方
「なんでここに来れたの?ここは火の海で近づけなかったはず」
「…」
まさか跳んできたなんて言えるはずもなく…沈黙を貫く
「言いたくないんだ…まぁいいや」
「問い詰めないんだね」
「うん…貴方が子供を助けてるのは見えたから…だから…貴方を信じる」
そう言いながら金島は俺に手を差し伸べる
「私は金島蜜李。貴方の名前は?」
「僕は橘圭祐。よろしくね」
互いに自己紹介をし、握手する
そして俺は逃げようとしたが、金島の馬鹿力のせいか握られた手は離れない
そして、この18年間避けてきた死亡ルートへの扉が開かれた
「ねぇ圭祐、君も仮面寮に来ない?」
その提案は死神からの死刑宣告にしか見えなかった
こんばんは!バラッパーです!
新作始めました!
見たらわかると思うんですけど仮面ライダーにインスピレーションを受けて書き始めました!
大人になって久々にみたガヴがもう最高すぎて書きたい意欲が抑えられませんでした。
これから投稿していくので楽しみにしていてください!