新たなる試練
ロイたちは、黒月の使徒の長を倒した後も戦いの余韻に浸る暇もなく、次なる敵に備えていた。その闇に包まれた世界で、彼らの足音だけが響き渡る。
「この先に何が待ち受けているんだろうな…」
カイルが目を細めて周囲を見渡しながら呟く。だが、ロイはその言葉を無視して前を見据えていた。闇の中で、彼の心は完全に集中している。
「次の試練は近い」
エファトが静かに言った。その言葉に、ロイはふと顔を向ける。
「お前も感じているのか?」
「もちろん。黒月の力はまだ完全に消えていない。さらに強力な敵が来るはずだ」
エファトの言葉は重い。これまで数多くの戦闘を経てきたロイたちだが、彼の言う通り、何かが違うのだ。
その時、突如として地面が揺れ、空が歪んだ。大地が震え、遠くの空が真っ黒に染まっていく。
「来るぞ!」
リリィが叫び、すぐに魔力を集め始めた。エファトは冷静に剣を構え、カイルも盾を握りしめる。
ロイは呪装適応の力を完全に引き出す。その瞬間、全身を取り巻く呪いのエネルギーが強烈に膨れ上がり、ロイの周囲を鋭い刃のように切り裂く。
「準備はいいか?」
「もちろんだ」
エファトが冷徹に答え、ロイを見据える。その視線の先に、ゆっくりと現れたのは、無数の黒い影が渦を巻いて集まる姿だった。影が形を成し、その姿が徐々に明確になっていく。
「……あれが?」
カイルが息を呑む。
その影から現れたのは、巨大な黒い龍だった。黒月の力を宿したその龍は、ロイたちの目の前に立ちはだかり、鋭い爪を振り上げる。
「まさか、こんなものが……!」
リリィが呟いたその言葉に、ロイはただ無言で剣を握り締めた。
「こいつは簡単に倒せる相手ではないだろうな」
エファトが冷静に言った。その言葉通り、黒い龍の力は圧倒的だった。龍の目から放たれる光線は、周囲の空間を焦がし、地面に深い亀裂を生じさせる。
「でも、俺たちはやるしかない!」
ロイが叫び、全力で龍に向かって突進した。呪装の力が全身を駆け巡り、周囲の闇を切り裂いていく。その速度は、今まで以上に速く、攻撃の威力も増していた。
「くっ!」
黒い龍が口を開け、ロイに向かって吐息を放つ。その一瞬、ロイは一瞬の判断で体をひねり、攻撃をかわす。しかし、その風圧に押し返され、少し後退してしまう。
「まずいな、こいつの力はかなりのものだ」
ロイは冷静に状況を分析する。だが、ここで引くわけにはいかない。彼は仲間たちに目を向け、指示を出す。
「みんな!この龍を倒さないと先には進めない!全力で行くぞ!」
「了解!」
カイルが盾を構え、リリィが強力な魔法を準備する。そして、エファトはすでに剣を構えて前に出ていた。
「行こう!」
ロイが叫ぶと、仲間たちは一斉に動き出した。エファトが素早く剣を振るい、龍の爪をかわしながら攻撃を仕掛ける。カイルは盾で龍の火球を受け止め、リリィは魔法の詠唱を続ける。
ロイもその隙間を突いて、龍の腹部に向かって突撃する。その刃は、龍の硬い鱗に当たっても微動だにしない。しかし、ロイはそのまま刃を引き抜き、再度力を込めて振り下ろした。
「今だ!」
リリィの声が響き、その一瞬、強力な魔法がロイの剣に集中される。ロイの剣から放たれる光が、黒い龍に深く食い込み、ついに龍の皮膚に亀裂が入った。
「これで終わりだ!」
ロイはその瞬間、全ての力を込めて剣を振り下ろす。その一撃が龍の心臓に命中し、龍は一瞬で崩れ落ちた。
「やったか……?」
カイルが息を呑んで見守る中、黒い龍の体が崩れ去り、黒月の力が消えていった。
「ふう……」
ロイは深く息を吐き、仲間たちを見た。リリィは微笑み、カイルはほっとした顔をしている。エファトもただ静かにその戦闘を見守っていた。
「でも、まだ何かがあるはずだ」
エファトが冷静に言った。その言葉に、ロイは再び心を引き締める。
「まだ終わったわけじゃない……次に備えろ、みんな」
その言葉通り、ロイたちの冒険はまだ続くのだった。




