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呪装の真髄

ロイとエファトの前に、使徒の王が崩れ落ち、その姿を完全に消し去った瞬間――

一見、戦いは終わったかのように見えた。しかし、周囲の空気はまだ重く、静かに渦巻いている。


「終わった……わけじゃない」


エファトは静かに言った。その目は、どこか遠くを見つめている。

ロイはその言葉の意味をすぐに理解できた。


「使徒の王は消えた。でも、黒月の呪いが完全に消えることはない。あれは、ただの前兆に過ぎない」


ロイは自分の体を見下ろす。呪装の力が今も身体の中に渦巻いており、外的な危険が去ったわけではないことを感じ取る。


「黒月が、この世界を呪う力をさらに広げるだろう。これを止めなければ、この世界そのものが呪いに支配されてしまう」


ロイはその言葉に深くうなずき、呪装をさらに強化する。その力を体内に流し込み、今までのような暴走を防ぐように意識を集中させる。


「呪装を全開にしても、あれだけの力を使いこなすのは簡単なことじゃない。だが、力を使わなければ、世界は崩壊してしまう」


エファトは冷静に状況を分析しながら、ロイに助言を送る。


「だからこそ、ロイ。お前はこの呪いの力の『真髄』を理解しなければならない。お前が呪装を使うたびに、その力が暴走し、全てを飲み込んでしまう。しかし、それはお前の力を完全に使いこなせていないからだ」


ロイはエファトの言葉を真剣に聞き、考え込む。自分の持つ呪装の力――それは他の誰もが持つことができない、特殊な力だ。そして、今までその力を使って無双してきた自分が、何もかもを支配しているわけではないという事実を受け入れつつあった。


「それじゃ、どうすればいいんだ?」


ロイの問いかけに、エファトは答える。


「お前が呪装を使う際に必要なのは、力の“源”を理解することだ。力は暴走するものだが、源に触れればそれを制御できるようになる」


ロイはその言葉に疑問を抱く。

「源」という言葉が、彼にとっては全くもって馴染みがないものだったからだ。


「源って……呪装の?」


「いや、呪装を作り出す『呪い』そのものだ。お前が扱っている呪いの力、つまりその“呪装”は、実際には呪いの根源から派生したものに過ぎない」


エファトの言葉を聞いたロイは、ようやくその意味を理解し始めた。

自分の呪装は、呪いそのものを宿している。しかし、その呪いをどう使いこなすかが問題だ。もしそれを完全に理解すれば、呪装の力を暴走させることなく、自分の思い通りに操ることができるかもしれない。


「呪いの根源――?」


ロイは呪装の力を感じ取りながら、無意識に手を伸ばしてみた。すると、あの漠然とした黒いエネルギーが指先に集まってくる。

そのエネルギーを感じると、心の中でかすかな声が響いた。


「呪いは、必ずしも悪ではない……」


その声に、ロイは驚くと同時にその内容に深く考え込む。

悪しき呪い、世界を呪い支配する力。それが必ずしも絶対的なものではなく、理解し使いこなすことができれば、むしろ強力な力となり得るのだろうか?


「これが……呪いの真髄か?」


ロイの心に浮かぶのは、今までの自分の戦い。力に頼り、暴力的に呪いを使ってきた自分。

だが、それでは本当に呪装を使いこなしたことにはならない。自分が暴走を抑えることができたとき、初めてその力を本当の意味で「理解」したことになる。


その時、ロイの手から溢れ出た呪いの力が、次第に穏やかさを帯びていく。

その力が彼の中で静かに流れ、心と一体化していくような感覚が広がる。


「これだ……」


ロイの目に、かすかな光が宿る。

それは、呪いを力としてだけでなく、世界との繋がりとして理解した証だ。


その瞬間――


「ロイ、前を見ろ」


エファトが、何かを感じ取ったようにロイに声をかける。

その視線の先には、黒月から放たれる新たな力が膨れ上がり、再び世界を呪いで満たす準備をしているのが見えた。


「呪いの真髄を理解したお前なら、これを止めることができるだろう。さあ、行け」


ロイは静かに頷き、もう一度剣を握り直した。その目は、今までとは違って決意に満ちている。


「行くぞ、エファト。世界を救うために、俺の呪装を解き放つ!」


その瞬間、ロイは全ての呪いの力を引き寄せ、その全てを解き放つ。

そして、黒月の呪いを消し去るため、全力でその力をぶつけるのだった。

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