黒月の誓いと終末の足音
黒月の光が再び大地を照らし、周囲の空気が重く、冷たく感じられる。
その赤黒い輝きが、まるで世界の終焉を告げるかのように、ひときわ強く輝きを放っている。
「……終わりじゃなかったのか」
ロイは、呪装の力で震える手を抑えながら、黒月を見上げた。
その中から、無数の影が立ち上がる。それは、使徒たちの死骸ではなく、さらに強力な存在――新たな使徒たちだ。
「奴ら、まだいるのか……!」
ロイの声が震える。
エファトは冷静に、しかし鋭く周囲を見回した。
「この黒月が完全に目覚めた時、使徒は完全に復活する。奴らが戻ってくるのは時間の問題だった」
その言葉に、ロイの心が掻き乱される。
自分が戦ってきたはずの敵が、死ぬことなく何度でも蘇る。
その事実が、深い絶望感を呼び起こす。
「でも、どうして……」
「理由は簡単だ。使徒たちは呪いの化身。呪いが完全に解放されることで、世界の秩序は崩壊し、全ての命が呪われ、支配される。黒月は、そのための扉だ。解放の証だ」
エファトは厳しい表情で続けた。
「これからが本番だ。もし、これを止められなければ――」
エファトが言葉を続けるのを、ロイは遮った。
「……なら、俺が止める。俺の力で、全部終わらせてみせる!」
「……ロイ」
エファトは、少し間をおいてから、ゆっくりと頷いた。
「俺も手を貸す。だが、お前だけに頼るわけにはいかない」
ロイは、呪装を引き締め、再び剣を握りしめた。
その手が震えているのは、自分でもわかっていた。
だが、もう後ろには引けない。あの時、使徒の王を倒した時に感じた、呪いの力――その力が今、最も必要な時だ。
「エファト、いくぞ!」
「おう」
エファトが前に出ると、二人の背後から新たな使徒たちが次々に現れる。その数、十体以上。
だが、ただの使徒たちではなかった。
それぞれの使徒は、かつての使徒たちとは違う力を持っている。
それに気づいた時、ロイの心は一瞬で緊張に包まれた。
「こいつら、やばい!」
その時、使徒たちの先頭に立つ存在――使徒の王の復活体が姿を現した。
その姿は、黒月そのものを模した巨大な影であり、その目は無機質な赤く光る瞳を持つ。
「まさか、こんな奴が……!」
ロイは、呪装を最強に引き出し、踏み込んだ。
「《呪装・闇天の斬撃》ッ!」
ロイの一撃が、使徒たちを切り裂いた。
しかし、それでも倒しきれない。使徒たちの肉体は、すぐに修復される。
「これ、完全に再生能力が異常だ!」
エファトが、後ろから援護しながら叫んだ。
「だが、あいつの力には限界がある。それが黒月の力だ。長く持たない」
ロイはその言葉を信じ、次の一撃に全力を込めた。
「行くぞ! 《呪装・破魔烈風》ッ!」
ロイの周囲に、黒い風が吹き荒れ、その風が使徒たちを包み込む。
だが、使徒たちはその中を突き進んでくる。
その力に耐えきれず、ロイは一歩後退し、膝をついた。
「うっ……くそっ!」
その時、エファトがすぐさまロイの前に立ち、剣を掲げる。
「ロイ、少しだけ休め。俺が先に片付ける」
エファトは、空中に跳び、深く踏み込むと、剣を一閃――。
「《不老剣・不朽刃》ッ!!」
その一撃が、使徒の王の復活体に突き刺さった。
そして、爆発的な光が放たれる。
「これで終わりだ……!」
だが、その光が消えた後、使徒の王は依然として立っていた。
「何だと……!?」
ロイとエファトは、絶句する。
その姿は、まさに不死の存在であり、どんな攻撃も無意味に見える。
「ダメだ……! どうやってもこいつは倒せない!」
その時、エファトが深く息を吸い込んだ。
「ロイ、今、最後の手段を使う。だが……その覚悟が必要だ」
ロイはエファトの言葉を理解し、頷く。
「俺は覚悟できてる。何があっても、終わらせる!」
エファトは深く頷き、次の瞬間、剣を両手でしっかりと握りしめ、力を集中させた。
「《不老剣・無限滅刃》――全ての呪いを斬り裂く!」
その一撃が放たれた瞬間、ロイの呪装も共鳴し、二人の力が一つとなる。
その刃が、使徒の王を貫く――




