神槍ユーベルト VS 呪装適応ロイ
乾いた荒野を裂くように、白銀の槍が唸りを上げる。
「――《裁槍:天罰穿》」
ユーベルトが放った光槍は、雷光を伴い、空間ごと貫くようにロイへと突き立つ。
対するロイは――
「……《呪装適応》、発動。負荷限界、突破状態」
その体に宿る装備は、呪いまみれの忌まわしき鎧。
まともな者なら即死すらあり得る負荷――それをロイは、“適応”しきっている。
「《呪解:収斂ノ檻》!」
空間が歪み、呪気が収束。
光の槍と呪いの波動が真正面から衝突した。
――轟音。
その瞬間、大地が抉れ、地平線の先まで砂煙が吹き上がった。
◆
「……やりますね、呪装使い」
白槍を構え直し、ユーベルトが言う。
「呪いによる限界突破……その存在は、我々“祝福”にとって反逆そのもの。だが、あなたの力は……純粋に“美しい”と思える」
「……アンタ、面倒な性格してんな」
ロイは呟く。
「敵対してるのに礼儀正しいし、無駄に人格者っぽい。だけど、芯は祝福主義ってわけか」
「そうです。祝福は、“神より授かる力”。ゆえに選ばれた者だけが持つ資格がある」
ユーベルトの声には迷いがない。
「しかし……あなたのような“例外”が現れれば、世界の秩序は揺らぐ。だから、今この手であなたを討たねばならない」
「だったら――来いよ、全力でな!」
ロイが地を蹴った。
重い呪装が信じられない速度で加速する。
「《呪走・深度四》!」
呪装適応によって制御可能になった“呪いの高速移動技術”。
黒い残像を描きながら、ロイはユーベルトへ肉薄した。
「……見切りました」
ユーベルトが槍を横に振る。
「《裁槍・回天陣》」
空中に放たれた数十の光槍が、空間を旋回する。
その軌跡は絶対回避不能の陣形――
「なら、ぶっ壊すまでだっ!!」
ロイが叫んだ瞬間、呪装の右腕が膨れ上がる。
「《呪撃・崩掌》!!」
呪いによって強化された打撃は、光の陣を力業で突破した。
ユーベルトの槍が辛うじて受け止めるが、その衝撃に地面が割れ、ユーベルトは後方へ数メートル飛ばされる。
「はっ……やはり、強い……!」
砂塵の中で、ユーベルトは微笑んでいた。
◆
――遠くから、レナとエリシアが戦いを見守っていた。
「……ロイ、すごすぎる。あの人、祝福四柱の一角でしょ?」
「でも、まだ終わってない。……あの騎士、まだ本気じゃない」
エリシアの目は鋭く光る。
「ロイも気づいてるはず。――これからが“本番”よ」
◆
「見事です、呪装使い。ですが……」
ユーベルトが槍を掲げる。
「ここから先は、“祝福の奥義”の領域。あなたがそれを見て生き残れるかは分からない」
白槍が天を突く。
「《最終形態――祝解・神槍顕現》」
空が裂け、神々しい光の柱が降り注ぐ。
ユーベルトの体に宿る祝福が、槍そのものと融合を始めた。
鎧が砕け、光が肉体に刻まれる。
「神槍、真の姿を――今こそ!」
槍が形を変え、巨大な光の矛へと変貌する。
――これが、祝福四柱の“真価”。
「さあ、呪装使いロイ。これが我が“全力”だ」
◆
ロイは構えを取り直した。
「……こっちも、“全力”でいかせてもらうぜ」
《呪装適応》がさらに深度を増す。
鎧の各部が黒紫の光を放ち、全身が“呪詛の器”と化す。
「《呪装最深・反刻》――呪いの限界、超えさせてもらう!」
ふたりの異能が、今、真正面からぶつかり合う。
光と闇――祝福と呪い。
神話にすら残されぬ戦いが、ここに始まった。




