新たな敵、祝福四柱
地上へ戻ったロイたちは、再び“呪都アトラグナ”の廃墟を歩いていた。
空は灰色、街は崩れ、息づく者はわずか。
かつて繁栄を極めたこの都市も、呪いと祝福の戦火の中で滅びた。
「ロイ、さっきの戦い……無理しすぎ。体、大丈夫なの?」
エリシアが心配そうに覗き込む。
ロイは頷く。
「ギリギリだが、まだ動ける。グレイヴの呪装書……あれに書かれてる技術、すげえよ」
その手には、呪装王から託された《呪装書・深淵篇》。
呪具の精製・融合・進化、その理論の全てが記されている、いわば“呪いの聖典”。
「祝福に頼らない力……俺たちの道具として、呪いを徹底的に利用するための技術だ」
「でも、それだけじゃ足りないよ」
そう言ったのは、レナだった。
「聖騎士団は、動いてる。……もう、“あたしたちだけでどうにかなる”って段階じゃない」
「……動いてる?」
ロイが聞き返すと、レナは一枚の報告紙を広げた。
それは地下の協力者たちから送られた暗号通信。
「これを解読したの。そこには、“祝福四柱”が動いたって書かれてた」
「祝福四柱……?」
レナは頷く。
「聖騎士団の中でも、最上位。四人の“祝福の頂点”。
つまり、奴らの本当のエリート部隊よ」
◆
その頃――遥か北方、《天頂聖城カリオン》。
煌びやかな白の大聖堂にて、祝福の光に包まれた者たちが集っていた。
「呪装の芽が膨らんでいる。それは即ち、我らの秩序に対する反逆だ」
そう言ったのは、白銀の甲冑に身を包んだ男――《第一柱・グレリウス》。
彼の背には翼のように輝く光剣が浮遊している。
「“選ばれし祝福”の外に、力を求めるなど……不敬。裁かれねばならぬ」
「どこまで暴れるのか、愚かな呪詛者たちは」
続けて言葉を発したのは、紅いローブを纏った女性――《第二柱・ラヴァルティナ》。
彼女の瞳は閉ざされている。
視えぬはずのその目で、すべての真実を見通しているかのように。
「グレリウス、貴様が行くのか?」
「いや、俺は“王城”の守護がある。動くのは――」
◆
その声に答えたのは、若き騎士だった。
白銀の槍を担ぎ、まっすぐな瞳を持つ青年。
「……では、僕が行きます。《第四柱》たる身として、裁きを執行する」
《第四柱・ユーベルト=シリウス》。
歴代最年少にして、柱の座に就いた“神槍の祝福者”。
「呪装者。その者の首を、我ら祝福の誇りに捧げましょう」
◆
そして数日後。
荒野を進むロイたちの前に、一人の騎士が立ちはだかった。
「――お初にお目にかかります、呪装使い殿」
白銀の鎧。槍と礼儀を携えた青年――ユーベルトだった。
その気配は、恐ろしく静謐。まるで“祝福の神威”そのもの。
「祝福四柱、ユーベルト=シリウス……か」
ロイは呟きながら剣を抜いた。
「来るなら、受けて立つぜ。俺は、ここで止まる気なんかねえ」
「……ええ、それでこそ。こちらも全力で臨む理由になります」
ユーベルトの白槍が、月光のような光を帯びる。
「これは“裁き”です。呪われし者よ、清めの光のもとに――沈め」
――戦端、再び開かれる。




