表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/203

呪装王グレイヴとの対峙

地下の闘技場のような空間に、異様な“呪気”が満ちていた。


玉座より立ち上がった男――グレイヴ。

かつて幾つもの王国を滅ぼしたと語られる“呪装王”が、今、ロイと対峙する。


「貴様の《呪装適応》、その力を見極めてやろう」


グレイヴの背後に浮かぶのは、一本の巨大な黒剣。


ただの黒ではない。刃身に走るのは無数の死者の顔――

《黒焉の剣》。装備した者の魂すら蝕むとされる、最悪級の呪具。


「……強化呪具の複数同時制御。しかもあれを本体にしてるのかよ」


ロイは即座にカースリンクを最大出力へ。


《呪装適応・第六段階》――

それは呪具との共鳴率90%を超えた時にのみ発動可能な“超限界装備”。


だが、グレイヴの“適応率”はそれを遥かに超えていた。


「来るぞ、ロイ!!」


グレイヴが空間を蹴る。


次の瞬間、闇を切り裂く斬撃が走った。


「――ッ!」


ロイは間一髪で《絶叫の盾》を前に出す。


ギィン!


甲高い音と共に、盾が軋む。

衝撃の余波だけで地面が砕け、周囲の呪具が吹き飛ぶ。


「なるほど……その盾、呪いを“防御力”として昇華しているのか」


「正解だ。でも、それだけじゃない」


ロイの瞳が光る。


《腐肉の篭手》に蓄積された瘴気を放出。

それは瞬時に鞭のような形となり、グレイヴに向けて伸びた。


「ふっ、浅い!」


グレイヴは呪剣を軽く振り、腐肉の鞭を斬り払う。


だが、それこそがロイの狙いだった。


「切ってくれて、助かったよ」


「……何?」


鞭の切断面から、瘴気の煙が爆発的に拡散する。


それは視界と感覚を奪う“精神干渉型”の呪い――

呪いによって築かれた“霧”の中に、ロイが飛び込む。


「一撃――入れるッ!!」


ロイの呪剣が、一直線にグレイヴの胴を狙った――


――だが、


「遅いな」


風のような刃が、ロイの横腹を浅く切り裂く。


「くっ……!」


霧が晴れると、グレイヴの姿はロイの背後。


「俺の《黒焉の剣》は、呪気を“空間”ごと裂く。貴様のような小細工は、通じん」


だがロイも、すぐさま跳び退いて体勢を立て直す。


「この程度で折れるほど、甘くねえよ」



遠巻きにそれを見守るエリシアとレナ。


「呪装王って……あんなレベルなの?」


「今のロイでも、まともに戦えるかどうか……それほどの相手よ」


「でも、ロイは戦ってる。折れない心で」


レナが、拳をぎゅっと握る。


彼女は分かっていた。ロイがどれほど無茶をしているかを。


けれども、彼は誰よりも強くあろうとしていた。


“呪いで世界を覆す”――その覚悟を、背負って。



ロイは短く息を吐いた。


(まだだ……もっと、呪いを引き出せ)


彼の内側で、カースリンクがうごめく。


《第七段階》へ移行するには、さらなる呪具融合が必要。

そしてその代償は、肉体の崩壊にすら至る。


だが、ロイの手は震えない。


「ならば、見せてやるよ――“祝福”に選ばれなかった者の、生き様ってやつを」


ロイが呪具を解放する。


次々に周囲の装備を引き寄せ、それらを瞬時に適応・装備。


《呪装適応 第七段階・混在型融合》

――複数の呪具を同時運用し、形状と効果を混成した特異装備化。


黒い鎧、剣、マント、全てが呪いで構成された異形の姿。


「なるほど……その姿、実に“呪装”だ」


グレイヴが剣を構える。


「ならば、貴様を“王の候補”として認めよう。――死合うに、値する!」


次の瞬間。


二人の呪装使いが、同時に跳び出す。


激突――!



時間がどれだけ経過したか分からない。


呪いと呪いのぶつかり合い。

空間すら砕け、地下空間は崩壊寸前だった。


ロイの体はボロボロだ。鎧の一部は砕け、呪具の反動で内臓にダメージが及ぶ。


だが、ロイの瞳は消えない。


「まだだ……! まだ、“俺”は止まってねぇ!」


呪いを喰らう。痛みを喰らう。絶望を、恐怖を、すべて装備として纏う。


それがロイの戦い方。


「受けろ、俺のすべてを――!」


最後の一撃。


ロイの呪剣が、グレイヴの呪装を砕いた。



――沈黙。


グレイヴは膝をつく。


その口元に、微かな笑みが浮かんでいた。


「……素晴らしい。“呪装の王位”に、相応しい」


ロイはゆっくりと立ち尽くし、剣を下ろす。


「俺は王になるつもりなんてない。ただ……」


「“呪いを力に変える”、その道を切り拓く……か」


グレイヴは頷く。


「ならば、その力――貸そう。お前の進む道が、ただの破壊でないことを信じてな」


グレイヴが手をかざすと、一冊の“呪装書”が宙に現れる。


それは彼がかつて呪具のすべてを記したとされる、伝承の書物。


「……持っていけ。これが、お前の未来を照らすのなら」



ロイはそれを受け取った。


そして、深く一礼する。


「感謝する。……呪装王、グレイヴ」


「行け、若き王。呪いの時代は、まだ始まったばかりだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ