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神殿の崩壊と、旅の再始動

神殿の頂が、静かに崩れ落ちていく。


あれほど神聖で、近づくだけで圧を感じた“祝福の象徴”が、まるで砂城のように音を立てて崩壊していく様子を、ロイたちはただ見つめていた。


「……終わったの?」


レナがぽつりとつぶやく。


「いや、始まったんだよ」


ロイは握った拳をゆっくりと下ろす。


手にはまだ、先ほど解読した石版のかけらがある。そこには確かに刻まれていた。


『呪いは喰らい尽くせば、神をも超える』


それはただの言い伝えではなく――

実際に、エファトという存在が“祝福の頂点”を一太刀で切り伏せた現実こそが、それを裏付けている。


「ハインリヒが倒されたことで、この神殿も役目を終えたんだわ」


エリシアが落ち着いた声で周囲を観察している。


あちこちに崩れた瓦礫や剥がれ落ちた祝福紋が散らばっていたが、もはやそれは“神聖”ではなかった。


「……祝福の真実、そして呪いの可能性。俺たちはそれを目にした。

それを――伝えにいかないといけない」


ロイの言葉に、エリシアもレナもうなずく。


「でも、どうやって?」


「神殿が崩れ、証拠も消えてしまう。証言だけで信じてもらえるかしら?」


「信じさせるさ」


ロイは真っすぐに言い切る。


「俺の呪いは、まだ終わっていない。

呪装適応カースリンク”――この力で、俺は祝福の虚構をぶち壊す」


「ふふっ、ロイくん……やっぱり変わったね。最初はただ呪いを使いこなすだけだったのに、今は自分で世界を変えようとしてる」


「……変えてやるさ。祝福に選ばれなかった“誰か”が、俺みたいに絶望して終わらないように」


そのとき、崩れた天井の隙間から、青空が覗いた。


まるでこの神殿が、ようやく“真実を見せた”かのような――そんな空だった。



数日後。神殿近郊の村にて。


ロイたちは、神殿で拾った石版と呪具を携えて、今後の方針を相談していた。


「次は、祝福教会の中心部……“聖域ラディナ”ね」


「さすがに正面突破は無理よ。いきなり呪いを掲げた連中が現れたら、問答無用で粛清されるわ」


「そこでだ」


ロイは一枚の地図を広げる。


「この“シェイド辺境域”――呪われた者たちが流れ着く集落。そこで“新たな装備”を探す」


「呪い装備……ね。より強力なカースリンクの触媒を?」


「それともう一つ、“ある人物”に会う」


「誰?」


「……《呪装王グレイヴ》。かつて、祝福に抗い、すべての呪いを収集したという亡国の王。

死んだって話もあるが、もし生きているなら……“次の鍵”を握っている」


エリシアもレナも、驚きはしなかった。


ロイはいつも、無謀な道を選ぶ。


でも、それを“貫けるだけの強さ”を、今の彼は持っている。



その日の夜。


ロイは静かに野営地の外に出る。


見上げた空は、雲一つない満天の星。


「……エファト。あんたのおかげで、ここまで来れた」


あのとき、彼は言った。


『選ばれなかった者の怒りを、力に変えろ』と。


「今なら、少しだけあんたの言ってたことがわかるよ」


――でも、俺はあんたみたいにはなれない。


「俺は俺の戦いをする。呪われた“全員のため”に、な」


星の光が、祝福の残骸を淡く照らしていた。


まるで、“神に見捨てられた者たち”を肯定するように――。



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