不老剣VS祝福の刃
天光の神殿、その中心部。
祝福の最高権威《第一席》ハインリヒ・ザルバートと、不老の剣士エファト・ストライヴが向き合っていた。
「この場に干渉する意図は理解しかねる。不老の剣士よ」
ハインリヒが静かに言う。
その目に浮かぶのは、まるで“異物”を見るような無機質な光。
「貴様は“歴史の終わった存在”のはずだ。なぜ今さら姿を現した」
「さあな。気まぐれだよ」
エファトは肩をすくめて笑った。
「だが、ひとつだけ言っておこう。
“神の刃”と呼ばれて舞い上がってるやつを見ると――」
瞬間、地を蹴る。
「――むかつくんだよ!」
金属音が炸裂する。
一瞬で詰めた距離、振り下ろされた“朽ちない鉄剣”――不老剣。
それを受け止めるハインリヒの“神剣”が、ギリリと軋んだ。
「ッ……!? この剣圧……!」
「言ったろ、千年だ」
ぐっ、と押し込むエファト。
その腕に宿るのは、超常でも奇跡でもない――人間の鍛錬の極致。
「選ばれた力? 祝福? ――そんなもんに、剣で勝てないとでも?」
ハインリヒが後方へ跳ぶ。
だが次の瞬間には、すでに背後を取られている。
「!?」
斬撃。連撃。連打。
どれもが、ただの剣技。
だが、“速すぎて”“重すぎて”“精密すぎる”。
「っぐ……!」
ハインリヒが初めて、顔をしかめた。
「まさか、神の祝福を受けずして、ここまでの……!」
「こっちはな、“呪いすら受けられなかった”クチでな」
エファトの剣が唸る。
それはまるで、時を裂く刃――
「お前が持ってるその“祝福”とやら、いったい何年積んできた?」
「……」
「たった数十年か。なら話にならねぇ。
“俺の剣”には――千年分の命が乗ってる!」
ドォン!
爆発のような衝撃と共に、ハインリヒの神剣が打ち砕かれた。
「っ……!!」
彼の身体が吹き飛ばされ、神殿の壁に激突する。
◆
一方その頃――
ロイたちは、神殿のさらに奥へと進んでいた。
そこにあるのは、祝福の記録室――選ばれし者の名が刻まれた“聖名碑”。
「……これが、祝福の“本体”?」
レナが呟く。
石碑に刻まれていたのは、歴代の“祝福認定者”の名。
その中に――確かに、“ハインリヒ”の名もあった。
だが。
「ロイ、これを……見て」
エリシアが示したのは、古い記録。
【ハインリヒ・ザルバート】――二代目祝福保持者
【初代保持者:不明/抹消処理済】
「初代……抹消……?」
「祝福の起源が、改ざんされてる……!?」
ぞわり、とロイの背筋が震えた。
祝福とは、神に選ばれた証――そう教えられてきた。
だがその“選定”は、人為的に書き換え可能だった……?
「ロイ、ここに“何か”がある」
エリシアが、石碑の裏に刻まれた隠し扉を発見する。
中から現れたのは、薄い石版だった。
ロイが手に取った瞬間――脳裏に直接、映像が流れ込んでくる。
「呪いも祝福も、等しく力だ」
それは、誰かの声。
古代の賢者か、あるいは――
「……俺たち、真実に近づきすぎたな」
ロイはそう呟き、視線を上げる。
「けど、それがどうした。俺たちは“呪い”の旗を掲げて、ここに来たんだ。
だったら――最後までやってやろうぜ」
◆
神殿・表層。
エファトとハインリヒの激突は、ついに最終局面へ。
「なるほど……理解した。不老の騎士。
貴様は“祝福に選ばれなかった者たち”の可能性だ」
「そうだよ」
エファトは、剣を肩に担ぎ直す。
「だからって、手加減はしねえ。――そっちが祝福のトップなら、全力でぶっ叩くのみだ!」
「ならば、こちらも“本質”を見せよう」
ハインリヒの身体が、発光する。
「祝福、真解放――!」
巨大な神翼が現れ、空間ごと光に飲まれる。
その輝きの中に、神の意志が宿っていた。
「これが、祝福の真の姿……!」
エファトは、一歩も退かない。
「かかってこい。どっちが“本物の強さ”か、はっきりさせようぜ」
次の瞬間、光と鉄が激突した――!




