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呪いを名乗る者

深淵が蠢く。


そこは光も音も失われた、呪いの始まりと終焉の地。

ロイとユウ――ふたりの呪われし者が向かい合い、その中央に白き呪獣が静かに唸り声を上げていた。


「この獣……“呪いそのもの”か」


ロイの身体に、冷たい圧がのしかかる。

ただ立っているだけで、骨の芯から削られるような感覚。

ユウの言葉通り、この空間は“試練”なのだ。


呪装適応カースリンク……か」


ユウがぽつりと呟く。


「君の呪いは、装備を通じて“負のステータス”を受け入れ、力に変える。

でもそれは“まだ外側”に過ぎない。

真の呪いは、“内側”から喰い破るように強さを得るんだ」


「それが、あんたのやり方か?」


ロイの声に、ユウは静かに頷いた。


「俺の呪いは、“存在の希薄化”だ。

誰にも記憶されず、誰からも認識されない。

だけどそれは同時に、干渉を受けない自由でもある。

だから俺は……この白き呪獣と融合して、この空間そのものを維持してる」


ロイは剣を抜いた。


「確かに……あんたの呪いは深い。けどな――

負のステータスが限界突破した時、俺は見たんだよ。

呪いは“可能性”だってな!」


ドンッ!


ロイの一撃が、白き獣の咆哮と交錯する。

闇の中で火花のように衝撃が弾け、空間そのものが歪む。


ユウは、動かない。


彼の呪いは――“存在の外”にいる。


「ふむ……じゃあ、次は俺から行くよ」


その瞬間。


ユウの姿が消えた。


「ッ!? どこだ……!」


ロイの背後、足元、空中、あらゆる方向から気配が殺到する。

“存在を捨てた者”の斬撃。

それは防御も回避も不可能に近い――


だが。


「カースリンク、第七層開放――反応負荷リフレクト・カース


ロイの身体から放たれた呪いが、ユウの斬撃をトレースする。

ロイのスキルが、ついに“攻撃された負の情報”を吸収して跳ね返す段階にまで進化していた。


「くっ……まさか、ここまで適応してくるとは……!」


ユウの姿が一瞬だけ現れる。その胸元へ――ロイの拳が突き刺さる!


ズドン!!


「ぐはっ……!」


ユウの身体が吹き飛ばされる。


白き獣が咆哮し、ユウのもとに駆け寄る。

だがロイは、追撃しなかった。


「……止めねえのか?」


ユウが尋ねる。ロイは黙って近づき、手を差し出した。


「呪いは敵じゃねえ。

呪いの力で……“生きることを諦めなかった”あんたなら、俺は仲間だと思える」


ユウは驚いたように目を見開き――そして、微笑んだ。


「……おまえ、いいやつだな。

たぶん、この塔を出た先で……俺の“居場所”はねえと思ってた」


「あるさ。俺が作る」


白き獣が、ロイに身体を寄せる。

触れた瞬間、まるで祝福を受けたかのような、あたたかい呪気がロイの中に流れ込む。


――それは、「共鳴」。


ユウの呪いとロイの呪いが、初めて対等な力として調和した瞬間だった。



数分後。

闇が晴れ、橋の向こうに光が差す。


「その先が、塔の外か」


「たぶんな。でも――」


ユウが言う。


「その先には、“神託の管理者”がいるはずだ。

この塔の最奥、最初に“祝福と呪い”を分けた存在。

……おまえは、そいつと向き合うことになる」


ロイは静かに頷いた。


「やっと……来たってわけだな」

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