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螺旋の先にて

「……よく生きていたな、呪われし者よ」


天剣騎士シグムントは、剣を収めた。

戦意が途絶えたわけではない。彼の表情は静かで、だが確かに――敬意が宿っていた。


「……あの一撃を耐えたのは、お前が初めてだ。

そして、俺が“天頂の刃”を振り抜いてなお、生き延びた者もな」


ロイは全身から黒い蒸気のような呪気を立ちのぼらせながら、膝をついたままゆっくり立ち上がる。


「――あんたの斬撃、確かに天を裂くに値する。

でもな、“天”ってのは、神の上にあるもんだろ?」


「……ほう?」


「だったら、俺の“呪い”は――その神ごと地に堕とすって決まってんだよ!」


ロイの瞳に灯るのは、恐怖ではなく、確信だった。


彼はまだ戦える。呪いに蝕まれながらも、魂が燃えている。


(シグムントの祝福は“結果”を先に斬る能力。だが、俺の呪いは“因果”の方に干渉できる)


(なら――)


「ここで、お前に引導を渡す。

呪装適応《深淵重奏・第二律カース・フーガ》!」


――ロイの身体が、“二重に存在する”かのようにブレはじめた。


時間と因果の境界をずらし、呪いの波長を自分自身に多重適応させる。

それは、彼にとっても“二撃目”の深淵だった。


「……“カース・フーガ”。聞いたことのない名だな。

貴様は、呪いの力を……そこまで引き出しているのか」


「俺は呪いしかないからな。

あんたらの“祝福”みたいな都合のいい力、最初から持ってねぇ」


ロイの足元の空間がゆらぎ、重力すら逆転していた。

その一歩は、天と地の理を無視した“呪いの踏み出し”。


そして、その刹那。


「行くぞ……! “お前の運命”ごと、断ち切る!!」


ロイの右手が、見えない“剣”を握った。


呪装適応による“カースブレイド”――

本来なら武器に適応できない呪装が、死に際に得た“幻の武器”だ。


それは、祝福の武具にすら匹敵する“呪いの結晶”だった。


「――来い、呪いの子。俺の祝福の刃が、お前の全てを飲み込む!」


シグムントが、再び剣を抜いた。


その刹那――空間が、真っ白に染まった。


剣と剣が交錯するのではない。

それは、“運命と呪い”の激突だった。



……しばしの静寂。


崩壊した空中階層の中、ただ二人の男が立っていた。


「……終わった、のか……?」


ロイの視界は、ぼやけていた。

左肩は切断寸前、全身に呪いが回っている。呼吸もままならない。


だが――


「……ふ、は……貴様の“呪い”……確かに、届いたぞ」


シグムントは、自らの鎧を砕き、剣を手放していた。


「この祝福の刃が折れたのは、初めてだ」


そこには、折れた“神剣”と呼ばれた《天頂の刃》が、無残に地面に落ちていた。


「貴様に……この先の階層への通行を……認めよう」


そう告げた後、彼の身体は光に包まれて消えていく。

祝福の騎士としての使命を終えた証。


ロイは、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。


(……勝った、のか……?)


(……いや、まだだ。塔は……まだ先がある)


目を閉じれば、遠くで誰かが呼んでいるような声がした。


『呪いの子よ――その先に“真実”がある。』



塔の天井が開く。


その先にあるのは、神託の塔・第八層。


そこには、祝福騎士団の《第一位》が待ち受ける。


そして、その遥か上空では――

黒翼のような影が、空を滑っていた。


(あれは……?)


それは、“異端の存在”――不老騎士エファトの影だった。


塔の空を一閃し、遥か彼方の空へと姿を消す。


彼はまだ、この物語に関わることはない。

だが、必ず来る。ロイが“辿り着くべき場所”に。

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