光翼のレイファルド
神託の塔、第四層。
そこは静寂と神光に包まれた、《審光の回廊》。
空中を浮遊する無数の光輪が、訪れた者の“罪”を映し出すという試練の場。
ロイがその空間に足を踏み入れた瞬間、塔の天井から降り注ぐように一つの影が舞い降りた。
「……呪いの者よ。ここより先は、祝福に選ばれし者の領域だ」
まっすぐな声だった。
降り立ったのは、一人の青年――
銀髪、蒼瞳。背中には六枚の光の羽。
【祝福騎士団《七翼》・第二位《光翼のレイファルド》】
祝福を受けし者の中でも、神に最も近いと称される“純粋祝福体”――
彼は祝福の本質、「光そのもの」を宿した存在だった。
「ロイ・ヴァレス。君が“呪装適応”の所有者か。……お前の存在は、多くの神官にとって“許されざる異端”だ」
「……で? お前は“許す側”か?」
「否。裁く側だ」
言葉と同時に、レイファルドの背から“神光剣”が生成される。
それは聖なるエネルギーの凝縮、斬られれば呪いなど蒸発する一撃。
「俺は、呪いを否定したいんじゃねえ」
ロイは呟く。
「“選ばれなかった者は沈黙しろ”っていう、その構造そのものが気に入らねぇんだよ」
「……ならば、その思想ごと浄化しよう」
レイファルドが剣を振り上げ、戦いが始まった――!
◇
神光と呪気が交差する。
バァァァン――!
剣と剣が衝突した瞬間、空間に光と闇が混ざり合い、爆発的な衝撃波が起こる。
レイファルドはその羽で空間を自在に飛び、神速で斬撃を放つ。
“祝福加護【光速歩法】”。速度は音をも超え、空気が歪む。
対するロイは、呪い装備【重呪靴バイティングシャドウ】を起動。
“全行動速度-90%”という呪いを逆利用し、相手の認識の方を遅くするという“反転効果”を発動。
(なるほど、“呪いの逆効果”か……!)
レイファルドが目を見開く。
自分の攻撃が“見切られた”ことを察した。
「祝福には、万能性がない。だが呪いには“創意”がある」
ロイが斬りかかる。
ガキィィィン!!
一撃、二撃、三撃……
互いに一歩も譲らぬ攻防が続く。
レイファルドの光剣は触れれば呪いを消滅させるが、ロイの呪装は一部“再生型”のため即死しない。
そして何より、“戦闘中に自分を強化していく”呪装適応の特性が少しずつ効き始めていた。
◇
だが――
「その程度で、“祝福”に勝てると思うなよ!」
レイファルドが、両手で神光剣を天に掲げる。
彼の背後に浮かぶのは、巨大な光輪――
それは【祝福解放術式・光環ノ裁】。
「光よ、全ての呪いを焼き尽くせ!」
光の柱がロイに向かって降り注ぐ――!
◇
ズドォォォォン!!!
塔の階層が崩れ落ちるほどの光撃。
空間が焦げ、呪いのエネルギーが蒸発していく。
「……終わったか?」
レイファルドが剣を下ろす。
だが――
「……甘ぇな、“祝福”」
爆煙の奥、ロイはまだ立っていた。
全身、ボロボロ。装備も剥がれかけ。
だが、その目だけは死んでいなかった。
「さっきの光柱、呪い装備【デスリバースマント】で逆吸収して、“反射蓄積”したよ」
「なに……?」
「お前の“祝福”は完璧だ。だが完璧だからこそ、逆転できる“隙”がある」
ロイの背から、真紅のエネルギーが噴き上がる。
「“呪い”ってのはな――雑草みたいなもんなんだよ。
踏みつければ踏みつけるほど、しぶとく伸びてくる」
反射エネルギーが、一点に収束する。
「――喰らえ。これは、“お前自身の祝福”だ」
放つは――【呪装反転・ヴェンデッタリバース】
真紅の槍となった光が、レイファルドを直撃する――!
◇
爆風の後、回廊の壁は崩壊し、静寂が戻る。
レイファルドは倒れていた。
彼の剣は砕け、羽も失われていた。だがその目には、まだ正気が宿っている。
「……強いな。呪いでここまでの力を……」
「違うさ」ロイは背を向けながら言った。
「俺が強いんじゃない。呪いでしか“生きられなかった奴ら”の声が、力になってんだよ」
◇
こうして、祝福騎士団《七翼》の一角――
第二位・レイファルドは、ロイに敗北した。
だが戦いは終わらない。
残る“六翼”が、次々に牙を剥く。
次の階には、より危険な存在が待ち受けていた――




