神代兵カースバニッシャー
《試練の殿》。神託の塔、第二層。
そこに現れたのは、かつて神が“呪いを否定するため”に造り上げた異形の兵――
【神代兵カースバニッシャー】
その存在自体が「呪いを否定する構造」を持ち、呪いに適応した者ほど効率よく殺すための兵器。
まさに、ロイにとって“最悪”の天敵だった。
「……俺のスキル『呪装適応』に、ここまで反応してくるとはな」
ロイは呟きながら、背負っていた大剣を引き抜く。
赤黒く爛れた刃、触れるだけで精神を侵す呪いの塊――
【重呪剣ダマスク】。彼が最も頼る呪い装備のひとつ。
『認識完了。対象、呪い適応者。危険度:神域指定。抹消を優先』
カースバニッシャーは、機械的な声でそう告げると、両腕を横に広げた。
その双剣から放たれたのは、“空間ごと呪いを刈り取る”聖なる波動。
「……来いよ。呪いにすがった化け物が、どこまで抗えるか見せてやる」
ロイは剣を構え、真っ向からその波動に飛び込んだ。
◇
ガッ――――ン!!!
刃と刃が交差した瞬間、空間がひび割れる。
カースバニッシャーの双剣は、接触しただけで呪いの効果を削り取っていく。
ロイの装備には常時発動しているデバフが山のようにある。
だが今、それが一つ、また一つと“無効化”されていった。
(こいつ……! 装備の能力を逆転していた分、今は“祝福として扱われて”剥がされてる……!)
ロイの「呪装適応」は、“呪い”を“有益なバフ”として扱えるチートスキルだ。
だが、それは“呪いとして認識される”ことが前提。
カースバニッシャーの聖なる干渉は、その“呪いの構造”そのものを無効化してくる。
(なるほど、これが神の造った呪い殺し……)
汗が流れる。
久々の“スキルが通じない相手”。
「だがな……」
ロイはニヤリと笑った。
「俺が呪いに“適応”したのは、スキルだけの話じゃねぇんだよ」
その瞬間、彼の体が赤黒い光に包まれる。
解放するは――呪装連結・中枢解放
ロイの体内に埋め込まれた“呪い装備のコア”が解放され、身体能力と反応速度が爆発的に上がる。
「理屈が通じねぇ敵ほど、殴りがいがある……!」
ロイの剣が閃く。
速度が、密度が、重さが、段違いだった。
(たとえ無効化されても、上から叩き潰せばいい)
理屈を覆す力こそ、呪いが“突き抜けた”証。
ギィィィィン!!!
斬撃と双剣がぶつかり合い、衝撃で周囲の大理石が砕ける。
『干渉強度、上昇。呪い耐性、急激に上昇……解析不能……』
「当たり前だ。俺は“呪いそのもの”を力に変えてるんだ」
カースバニッシャーは後退する。
反応速度と斬撃密度の差に、徐々に押され始めていた。
◇
その様子を、神託の塔の最上階から“ヴィゼル”が見下ろしていた。
「……やはり、興味深いな。ロイ・ヴァレス」
浮遊玉座の上、彼は指を顎に添えて笑う。
「本来、呪いなど“選ばれなかった者”に落ちるゴミのはず。
だが君はそれを反転させた……いや、“肯定”した」
ヴィゼルは立ち上がり、手を翳す。
彼の背後に浮かぶのは、七つの“神聖装具”――祝福の頂点に位置する神器たち。
「このままでは済まない。塔を登る者として、君には《正規の審判》を受けてもらおう」
――“祝福騎士団・七翼”を動かせ。
彼がそう命じた瞬間、王都全域に緊急の“聖告”が鳴り響いた。
《告:神託の塔に侵入した異端者あり。至急、対応せよ。対象:カースリンク所持者、ロイ・ヴァレス》
◇
一方その頃――
ロイは、戦闘の末にカースバニッシャーを“破壊”することに成功していた。
装備はボロボロ。呪い装備の効果も一部剥がされたままだが、勝利は勝利だ。
「……ふぅ。神造兵器も、ぶん殴れば倒せるんだな」
だが休む暇はない。
塔はすでに彼を“異端者”と認定し、全階層で警戒を強めている。
その中でも特に危険なのが――祝福騎士団の精鋭部隊《七翼》。
“聖騎士団最強の七人”。
そして、ロイの宿命とも言える相手たちだった。
(ついに来るか、“祝福の本体”が)
呪いを力に変えた者 vs 祝福に選ばれたエリート。
ここから先は、真っ正面から“祝福の正義”を叩き潰す戦いだ。
ロイは立ち上がり、再び塔の上層を見据えた。
(行くぜ、祝福王子。お前の作った“天国”を、呪いで焼き尽くしてやる)
第三章、本格反撃編へ突入――!




