第二章最終話_終焉と継承
戦いは終わった。
神印騎士団の最強・ルドヴィクが倒れ、
呪い装備を極めた青年――ロイ・フレイが、勝利を掴んだ。
だがその勝利の代償は、あまりにも大きかった。
◇
「ロイ、しっかりして……!」
仲間たちの声が遠くなる。
【呪装・奈落】――
それは“命を削る呪いの最終段階”だった。
体の奥底で、何かが壊れる音がした。
骨ではない。肉でもない。
もっと根源的な、“生きるというシステム”そのものだ。
「はは……こりゃ、限界か……」
気を失いそうになる意識の中で、ふと浮かぶのは、かつての自分だった。
◇
「祝福を受けた者だけが英雄になれる?
ふざけんなよ……!」
あの頃のロイは、誰からも相手にされず、
呪いしか得られず、
ただ“劣等”と見下され続けていた。
「……だから、俺は這い上がってきた」
その姿を、ようやく“誰か”が見てくれるようになった。
仲間たち。
同じ呪われた装備を受け入れ、彼に希望を見出した者たち。
そして、目の前の光景――“聖騎士団の瓦解”。
世界は、変わり始めている。
◇
ルドヴィクは拘束され、治療班に引き渡された。
だが、彼の意識は未だ戻らない。
「聖騎士の象徴が敗れた……これから、どうなる?」
「混乱するだろうな。でも……」
ロイは、立ち上がった。
満身創痍のはずなのに、その瞳は燃えている。
「ここからだ。俺たちが、世界に“選ばれなかった者たち”の誇りを見せるのは」
◇
その夜、ロイはかつて使っていた古い剣を手に取り、山のふもとへ降りた。
そこに、一人の旅剣士が立っていた。
「来ると思ったよ」
「……エファト」
ロイが、わずかに笑う。
「お前が“選ばれた側”なら、今ごろ俺を見下してただろうな」
「違うよ」
エファトは、肩に担いでいた鉄剣――**不老剣**を地面に突き立てた。
「おれは“選ばれなかった側”の先輩さ。
何千年かけて、それを“実力”でひっくり返してきた」
ロイは、黙って剣を見つめる。
「ロイ、お前の“呪装適応”は、祝福を否定する力じゃない。
それは、“誰にだって可能性がある”って証明だ」
「……ああ」
「だから――お前が次に壊すのは、“世界のルール”だ」
エファトはそう言い残し、背を向けて去っていった。
その背中は、あまりにも遠く、そして、信頼に満ちていた。
◇
夜が明ける。
ロイは山の上から、まだ眠る街を見下ろし、
その中心に立つ“王都”を見据える。
「あとは……てめぇら王族どもだな」
呪いが、静かに揺れる。
第二章、ここに終幕――
だが、ロイの戦いは、まだ終わらない。




