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呪装結社《黒の楔(くさび)》

空はまだ、裂けたままだった。


王都フィルグラードの中央広場。

ロイ・クロードが「革命」を宣言してから、たった数分。

それでも世界は、決定的に変わっていた。


そして、その中心に立つもう一人の人物――


「……改めて、自己紹介をするわ」

紅の瞳、闇より濃い装束。しなやかな手足に、鋭い空気を纏った少女が名乗る。


「わたしはリゼ・ノクス。呪装結社《黒の楔》所属、【呪装No.13:怨響の首輪エコー・ノート】の適合者」


ロイの隣に立つリゼの声は、落ち着いていた。

だが、確かに街全体に響いていた。魔力でも魔法でもない、“呪いの波動”そのものが声を運んでいる。


「……“呪装結社”?」


貴族たちがざわつく。衛兵は剣を抜いたまま一歩も動けず、神殿騎士は結界の崩壊に対処するのがやっとだった。


ロイが応える。


「俺一人で王国に挑むと思っていたか? 祝福を与えられず、呪いだけを押し付けられた者たちは、確かにいた。

ただ知られていなかっただけだ。“存在しない”とされてきただけだ」


リゼが軽く指を鳴らした。


《接続開始:黒の楔・外縁メンバー群転移リンク確立》

《召喚拠点・封域06《アルドの淵》──ゲート展開》


無数の“影”が、王都の広場に降り立った。


黒いフードに、異形の呪装。

剣ではなく“牙”、杖ではなく“腕”。

祝福とは全く異なる形をした装備をまとい、呪装者たちが次々に姿を現す。


彼らは全員、王国によって記録されていない。

いや、「されなかった」者たち。祝福を得られず、捨てられた庶民や奴隷、冒険者、辺境の民――


“存在を否定された者たち”の集い。


それが、《黒の楔》だった。


「……随分と集まったな」


ロイは見渡しながら呟く。

そして、ある“記憶”を思い出す。



かつて、ロイが初めて呪装具を装備し、死にかけた日。

彼を拾ったのが、リゼだった。


「呪いが怖いか? 苦しいか? 身体が裂けそうか?」

「それが“普通”だよ。……でも、あんたは死ななかった。適応した」

「それが、呪装適応者──カースリンクの証さ」


彼女は微笑んで言った。


「私たちは、そうやって生き延びてきた。選ばれなかった側で、這いずって、呪いに染まりながら」


「だからこそ、選ばれた奴らを引きずり下ろす覚悟があるのよ」



──その言葉が、今、現実となっている。


王都の空が再び震える。

だがそれは呪装の力ではなかった。


「天上より通達! 王国高位執政庁より指令──“聖騎統制令”発動!」


空から降り注ぐのは、黄金の光。

そして現れたのは、白金の鎧に神翼を模した装飾。王国最高戦力。


「祝福階級・特等執行官、《アストレイア・リュミエール》、参る」


女性の聖騎士。

セルディアとは異なり、国家直属。祝福の“核”をその身に宿した、“神の器”。


彼女が手にしたのは、祝福装備No.1《天義の刃・ソルレイヴ》。

神話級に分類される、対呪装用兵器だった。


リゼが呟いた。


「やれやれ、早くも“大当たり”を引いたわね」


ロイは一歩、前に出る。


「いいさ。革命ってのは、最初の火種が一番熱いもんだ」


──呪いの軍勢 vs 国家最高騎士、王都戦線、開幕──

「神の器 vs 呪いの適応者」


国家がついに“祝福の頂点”を送り込む。

祝福装備No.1を持つアストレイアと、呪いの深淵を超えたロイの直接対決。

そして、呪装結社《黒の楔》の真の目的が明かされる――!

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