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祝福に見放された者たち

集会所を出た夜、ロイはスレイブレーンの高台に腰掛け、ぼんやりと崩れた王都の夜景を見つめていた。

崩壊した遺跡のようなその光景も、どこかに人の営みの残滓を感じさせる。


「……変わると思うか? この世界」


隣に立つレムに、ロイは問いかけた。


「すぐには無理だな。だが、爪痕は残る。お前の行動が、“希望”としてな」


「……だったら、俺はその希望に責任を持つさ」


ロイは軽く背伸びをし、ぼそりと呟いた。


「俺たち“祝福に見放された者たち”が、世界の形を壊してやる。呪いの力でな」



翌日、ロイはレムと共に、集会所の広場に再び立っていた。


周囲には、100名近くの若者たちが集まっていた。

皆、祝福から見放され、“呪い”の可能性を信じようとする者たち。


「──昨日は言いそびれたが、俺が持ってるスキルの名前は《呪装適応カースリンク》だ」


「簡単に言うと、“呪いの装備に適応するだけ”のスキル。だけどな、それが──」


「『全ステータスマイナス』という最底辺の数値を、“限界突破”させた」


「俺が今、祝福の聖騎士にだって一矢報いられるのは、この“呪いのせい”だ」


ざわつく人々。誰もが、呪いという言葉に潜む力に耳を傾けている。


「呪いは、祝福に劣るものじゃない。『扱える者がいなかった』だけだ」


「だったら俺がその“道”を作る。次に続くやつらのために」


そう言って、ロイは腰の小さな黒い箱を持ち上げた。


中には、ロイがこれまで戦いの中で回収し、改造を重ねてきた“呪装”の試作品がずらりと並んでいた。


「ここにあるのは、祝福者のために作られた装備じゃない。お前たち“呪いしか持たない者”のための装備だ」


「……ついてこれるか?」


その問いに、数人の若者が前に出た。


最初に名乗ったのは、白髪の少女だった。両目に深い影を宿している。


「私の名前はユメ。祝福の適性なし。“呪い感応体質”で、隔離されていた」


「それでも、力があるのなら──私は、使いたい。生きるために」


次に出てきたのは、獣人の少年。体に刻まれた鞭痕が痛々しい。


「オレはルア。祝福騎士の訓練生だったが、“属性不一致”で追放された」


「呪い装備、オレにくれ。力、欲しい」


次々に現れる“呪い適性者”たち。


中には、元祝福研究員、元傭兵、かつて処刑寸前だった者までいる。


ロイは一人ひとりの瞳を見つめながら、うなずいた。


「……わかった。じゃあ今日から、お前らは“俺の呪装兵団”の第一期生だ」


「不完全でもいい。不器用でもいい。……呪いしかない俺たちで、“祝福の世界”を叩き壊す」


ロイの言葉に、雷鳴のような歓声が起きた。



その頃、王都上層の聖堂ルメニア──


騎士団本部で、黒髪の青年が一枚の報告書に目を通していた。


「“呪装兵団”……? はは、なるほどな」


青年の名はアスフィル・グリード。

王国最年少で“第三階位祝福《蒼剣の印章》”を授かった異端の天才騎士。


その眼差しは、どこか愉しげだった。


「ロイ。お前……“面白いこと”してくれるな」


部屋の奥、巨大な双剣が静かに光を放つ。


「さて──次に、お前の前に立つのは俺かもしれないな」



一方その頃、スレイブレーンではロイとレムが新たな拠点の設営を進めていた。


「まさか、こんなに集まるとはな」


「希望ってのは、何よりも強い力になるんだな……」


「だが、これは“始まり”にすぎない」


レムが真剣な表情で言う。


「今後、王国はお前の存在を明確に“脅威”と認識し始める」


「対処のために動くのは……次の階位だ。副団長よりさらに上の、王直属の祝福者たちが」


「……来るなら来いさ」


ロイは呟く。


「今の俺は、“一人じゃない”。それが何より強いって、最近気づいたんだ」


ふと、遠くで何かの爆発音が響いた。


レムが眉をひそめる。


「始まったか……小競り合いじゃない、“浄化戦”の前兆だ」


「浄化戦……?」


「祝福によって、“呪いごと街を浄化する”。──つまり、“お前のせいでここが襲われる”ってことだ」


沈黙が流れる。


だがロイの目は、鋭く輝いていた。


「だったら迎え撃つしかねぇだろ。──呪いの力で、祝福に真っ向から勝つ!」



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