王都への帰還、呪いの革命宣言
──世界は揺れた。
聖騎士団第二戦線、壊滅。
深淵遺跡にて、S級呪装者による圧倒的戦力の行使が確認された。
これをもって王国は、初めて“祝福を持たぬ者”を国家脅威対象に認定する。
王都では、連日その名が飛び交った。
「……聖騎士団が……負けたのか?」
「ロイ・クロード? あの“無能の庶民”が?」
「ありえない……祝福がない者が、どうやって……!」
民衆の目が揺らぎ始めていた。
貴族は沈黙し、王家は焦り、聖堂騎士たちは必死に“呪いは悪”と叫び続ける。
だが、もう遅かった。
その中心地――王都フィルグラードの中央広場。
突如として、空が黒く裂けた。
「!? 転移魔法……!? いや、これは……空間そのものが……っ」
現れたのは、漆黒の鎧に身を包んだ男。
虚無の瘴気を纏いながら、確かな足取りで王都の中心へと歩を進めていく。
そう、それは――
「ロイ・クロード……っ!」
「本当に……来やがった……!」
市民たちは一歩、二歩と後退する。
だが、彼は誰にも攻撃せず、ただ王都の中心に立つ大広場へと向かった。
その手には、折れた神剣の柄──かつての友、セルディアの剣の名残が握られていた。
ロイはそれを掲げ、呪いの力で街中に響くように、声を放った。
「王都の者たちよ。俺はロイ・クロード。祝福なき者にして、呪いの適応者だ」
「生まれながらに“選ばれなかった者”として見捨てられ、蔑まれ、這いつくばって生きてきた。
だが今、俺は祝福を打ち破り、神の剣を砕き、聖騎士団を退けた」
「これが、呪いの力だ」
空間が振動する。
誰かが息を呑み、誰かが震えながら耳を傾ける。
「問おう。祝福を持たぬ俺がなぜ、ここに立てている?」
「なぜ、神の寵児たちが、俺の前で倒れた?」
「答えは一つだ。──祝福は“力”ではない。単なる“特権”だ」
ロイの声が、都市全体を覆うように響く。
その言葉に、民衆の中の“声にならなかった声”が目覚めていく。
「庶民に未来はないと?
祝福なき者はただ働き、ひれ伏し、死ぬだけだと?
──そんなものは、もう終わりだ!」
呪装具が黒く脈動する。空が震える。
《システムログ:都市魔導結界へ干渉──構造崩壊開始》
王都を守るはずだった結界が、音もなく崩れ去る。
「俺は宣言する。今日この時をもって――」
「呪われた者による、呪われた者のための、呪いの革命を開始する」
広場が騒然となった。
「な、何を言ってる……! 王都に反旗を翻すというのか!」
「この者を、捕えよ……!」
「呪装具保持者! 神聖法により拘束せよ!!」
だが、衛兵たちが走り出すよりも早く、空間が裂けた。
次元を貫いて現れたのは、ロイではなかった。
もう一人の、呪装使い――紅い目の少女が、静かに降り立つ。
「やれやれ、ちょっとは待ってくれるかと思ったが。随分と派手にやるじゃないか、ロイ」
「遅いぞ、リゼ」
「アンタが速すぎんのよ」
新たな呪装者の登場に、王都の空気が凍りつく。
ロイは口元をわずかに歪め、こう言い放った。
「さあ、はじめようか。“革命”を」




