Ω崩壊:神の死と、祝福なき夜明け
「終わらせる……!」
ロイの拳が、《Ω》の神核に到達する。
《スキル発動:零因適応》
《効果:全祝福・全呪いの系統定義を書き換える権限を強制取得》
《対象:世界構造階層・最上位システムコア》
その一撃は、“力”を超えていた。
それは祝福でも呪いでもない、“存在の価値そのもの”に干渉する力。
Ωの空間が激しく揺れる。
制御構造が次々と崩れ、神殿の壁が白い光に飲まれていく。
『存在定義エラー。祝福因子喪失。呪い因子喪失。
選別構造──喪失。』
Ωの声が次第に、か細い“人の声”へと変わっていく。
それは、《祝福の原初母体》――少女の姿をした演算核だった。
「……私は……選ぶことしか……できなかった……」
ロイはそっと手を伸ばす。
「それが悪かったんじゃない。
でも、それしか“許されてなかった”ことが、もう間違いだったんだ」
「だから今、選ぶ権利は──俺たち全員の手に戻す」
ロイが放つ、最後の宣言。
「祝福も、呪いも。
それを“生まれで決める時代”は、ここで終わりだ!」
神核が砕ける音と共に、Ωの光が消える。
そして。
世界は、静寂に包まれた。
◆終焉と夜明け
白い霧が晴れていく。
虚神殿は消え、ロイとリリィは瓦礫の中に倒れていた。
「……終わったの……?」
「――ああ」
ロイは息をつきながら、空を見上げる。
その瞳に、かつてなかった“自由”の光が宿っていた。
神の干渉が消えた空は、どこまでも澄んでいた。
やがて世界中に、変化が訪れる。
祝福の加護が消えた聖騎士団は、力を失い民に頭を垂れた。
呪いの刻印が外れた者たちが、自由な魔力適応を始めた。
新しい世代の子どもたちが、“選別なし”にスキルを開花させる世界。
それは混沌と希望が混ざる、まっさらな夜明けだった。
◆再会と旅立ち
数日後。
小さな村の丘の上。
ロイとリリィは、呪装を外し、久々に陽の下を歩いていた。
「お兄ちゃん……これから、どうするの?」
「そうだな」
ロイは、少しだけ笑って言った。
「“世界の選別構造”は壊した。でも、
“人の選び方”は、まだ歪んでると思うんだ」
「だったら俺は――」
「この世界で、“選ばれなかったやつら”がちゃんと笑える道を作る」
「呪いでも、祝福でもなく。
“生きる意志”で動ける奴が、ちゃんと報われる場所をな」
リリィが頷く。
「……じゃあ、私はその隣にいるよ。ずっと」
二人は歩き出す。
その背中の先にあるのは、未知の世界と、無限の可能性だった。




