断章三:適応者たちの墓標
──《大呪核》、第三断章:記録領域【未選定者の記憶群】、起動。
「ここは……?」
ロイとリリィが立つのは、霧に覆われた静かな原野。
その一面に、無数の“黒い石碑”が立ち並んでいた。
そのすべてに刻まれていたのは──
《適応失敗体》
《被選別者No.00387〜NO.99991》
《原因:祝福拒絶/呪装暴走/人格崩壊》
「ここに……これだけの数の、“俺と同じ奴ら”がいたのか……」
石碑の一つに手を置くと、声が響く。
「……お前は、“最後の適応者”だな」
現れたのは、かつての呪装適応者──灰髪の青年。
名を《アゼル・フェイン》。王歴600年、最初に“祝福なき呪装者”として神に反旗を翻した者。
「俺たちは皆、“適応者”として目覚めたが──
最後は必ず、“選別者”に潰された。
祝福の支配を壊すには、呪いだけでは足りなかった」
「だが、お前には“別の鍵”がある。
呪いを超えた先──“他者への適応”。」
ロイの心が揺れる。
「他者への……適応?」
アゼルが指差した先、霧の奥から次々と現れる幻影たち。
それは過去の適応者たち、呪いを抱き、命尽きた者たちの記憶。
幼くして呪いに飲まれた少女
自らを呪装化し、仲間を守った戦士
祝福を捨てて呪いを選んだ元聖騎士
そして、彼らはロイの中へと“記憶の欠片”を託す。
《スキル:群魂適応》
《効果:過去適応者の記憶・技能・装備構成を一時共有化》
「俺の呪装は──一人のものじゃなかったんだな」
ロイは静かに目を閉じる。
リリィがその手を握った。
「お兄ちゃん……私も、まだ戦えるよ。
この力……“ラムダ”の記憶すら、あなたの力になるなら──使って」
リリィが自らの魂核をロイに融合させる。
《融合呪装:黒銀律式(シルヴァ=カース)》
《効果:祝福・呪いの混成適応/対Ω干渉率+999%》
次の瞬間、空間が崩れ──“Ωの本体領域”へと繋がる扉が現れた。
◆Ωとの決戦準備
その奥から、神域構造の中心にある“虚数神殿”が姿を現す。
『接続完了──最終制御階層へようこそ、最下級の者たちよ』
Ωの声は依然として無機質だったが、そこに微かな“焦り”が滲んでいた。
『歴代適応者の記憶群が反応。
想定外の群体融合によるスキル進化を確認。
警告:祝福体系に対する深刻な脅威を検出』
ロイは一歩踏み出し、宣言する。
「俺たちは“祝福を受けなかった側”だ。
でも、呪いを武器にして、意志で立ち上がってきた」
「この力は、お前の作った選別システムじゃ測れねぇ。
お前の存在ごと、ぶち壊してやるよ──《Ω》」
その言葉に応じるように、空間に雷光が走る。
──最終戦争の開幕を告げる音だった。




