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狼の章 第一話 祝福の国で、最も祝福されていないもの

獣人国家・王都。


祝福の塔を中心に、

金と光が溢れている。


だがその影で、

民は俯いていた。


「……税、また上がるらしい」


「祝福維持費だとさ」


「ありがたい話だ」


――誰も、

本気でそう思っていない。



王城・回廊。


第二王子ヒポスは、

一人のメイドに声をかけていた。


「……大丈夫ですか」


メイドは、

一瞬怯え――

それから慌てて頭を下げる。


「も、問題ありません!」


ヒポスは、

小さく首を振った。


「無理は、

 問題です」


そう言って、

水を差し出す。


「ありがとう」


名を呼ぶ。


「ミレア」


メイドの目が、

大きく見開かれる。


「……覚えて、

 くださっていたんですか」


ヒポス

「ええ」


「あなたは、

 昨日も遅くまで働いていました」


それだけ。


だが――

その光景を、

王座の間から見ている者がいた。



獣王レオンハルト。


黄金の鬣を持つ、

威厳そのものの王。


その隣に、

第一王子レオニスが立つ。


レオンハルトは、

静かに言った。


「……見たか」


レオニス

「……はい」


レオンハルト

「今のが、

 王家の血だ」


ヒポスを呼ぶ。


「来い」



謁見室。


レオンハルトは、

怒鳴らない。


ただ、

事実を告げる声。


「なぜ、

 使用人に礼を言った」


ヒポス

「彼女が、

 疲れていたので」


一瞬の沈黙。


そして、

王は笑った。


「それが、

 欠陥だ」


ヒポス

「……何が、でしょうか」


レオンハルト

「祝福だ」


「祝福を受けた者が、

 受けぬ者に心を配る必要があるか?」


玉座から立ち上がる。


「祝福とは、

 選別だ」


「選ばれた者が、

 選ばれなかった者を使うためのものだ」


そして――

冷たく、断じる。


「お前はな」


「ゴミに情を向ける」


「だから祝福が寄り付かない」


「欠陥品だ」



ヒポスは、

言い返さない。


だが、

目を逸らさない。


「……それでも」


静かに。


「民は、

 生きています」


レオンハルト

「だから愚かだ」


レオニスは、

そのやり取りを見つめていた。


剣では勝てない。

人望でも敵わない。


(……祝福がなければ、

 俺は……)


その思考を、

祝福の光で塗り潰す。



王城の外。


ロイは、

その一部始終を聞いていた。


腰には、

新しい刀。


名は――

豊久。


(……なるほどな)


(祝福の国で、

 一番王してるのが、

 呪い持ちか)


刀が、

微かに鳴る。


まるで――

「面白ぇ」とでも言うように。


ロイは、

歩き出した。


この国で。

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