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新章・第二十七話 灰王、六割

宝玉は、

静かだった。


光を放つわけでもなく、

力を主張するでもない。


ただ――

そこに在る。


ロイは、

それを手のひらに乗せ、

ゆっくりと息を吐いた。


「……じゃあ、やるか」


誰に言うでもなく。



宝玉に、

指先が触れた瞬間。


――カチリ。


歯車が噛み合うような、

感覚。


頭の奥で、

何かが“戻る”。


(……ああ)


(これだ)


ロイは、

目を閉じた。


剣の握り。

踏み込みの角度。

重心移動。


思い出すのではない。

最初から知っていたものが、戻る。


立ち上がる。


剣を取る。


振る。


――ズン。


地面が、

浅く割れた。


「……はは」


ロイは、

笑った。


「剣は……

 戻ったな」


だが。


胸に手を当てる。


威圧は、出ない。

祝福への抵抗も、弱い。


分かる。


これは――

六割。


「……なるほど」


「全部じゃねぇ」


宝玉は、

もう光っていない。


役目は、

そこまでだと言わんばかりに。



アークが、

慎重に距離を詰めてくる。


「……どうですか」


ロイ

「剣は戻った」


「だが――」


肩をすくめる。


「まだ、

 “灰王”じゃねぇ」


アークは、

一瞬だけ目を伏せ――

それから頷いた。


「……それで、いい」


ロイ

「?」


アーク

「今までが、

 異常すぎました」


「世界が、

 追いついていなかった」


ロイは、

苦笑する。


「言われてみりゃな」



アークは、

地図を広げた。


指差す先。


そこは――

人の国ではない。


「……ここです」


「獣人国家」


ロイの眉が、

わずかに動く。


「……狼か」


アーク

「はい」


「そして――」


一拍。


「狼の権能が、

 そこにあります」


ロイの目が、

細くなる。



アークは、

珍しく強い口調で言った。


「ロイ」


「獣人は……

 正直、ヤバい」


ロイ

「祝福持ちか?」


アーク

「……人間以上に」


「獣人は、

 祝福を誇りとして受け入れた種族です」


「拒まない。

 疑わない。

 疑問すら持たない」


言葉を選びながら、

続ける。


「結果――」


「祝福に最も近づき、

 最も歪んだ存在になった」


ロイ

「……獣人化、か」


アーク

「ええ」


「もはや理性より、

 祝福が判断する個体もいます」


ロイは、

静かに剣を見た。


六割の力。


威圧なし。

抵抗なし。


(……ギリギリだな)



ロイは、

剣を肩に担ぐ。


「……いいじゃねぇか」


アーク

「ロイ?」


ロイ

「原点回帰だ」


「祝福が正義面してる相手と、

 殴り合う」


口元が、

歪む。


「一番、

 俺の物語らしい」


アークは、

一瞬だけ不安そうに――

それから、笑った。


「……灰王連合、

 動きますか」


ロイ

「ああ」


「ただし――」


剣を、

軽く叩く。


「今回は、

 無双じゃねぇ」


「噛みついて、

 削って、

 倒す」


目が、

獣を睨む目になる。


「狼なら……

 なおさらだ」



遠く。


獣人国家の方角で、

咆哮が上がる。


祝福に満ちた、

獣の声。


それを聞きながら、

ロイは思う。


(……六割で、

 どこまでやれるか)


(試してやる)


灰王は、

完全ではない。


だが――

剣は戻った。


そして次の敵は、

人ですらない。


祝福を信仰し、

祝福に選ばれ、

祝福に喰われた者たち。


――祝福 vs 灰。


物語は、

再び原点へと戻る。

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