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新章・第二十二話 折れぬ者たち

剣塚の谷から少し離れた、

古い街道沿いの宿場町。


トヨヒサは、

朝の空気を吸いながら歩いていた。


名誉騎士の名を置いてきたとはいえ、

彼はまだ流れ者だ。


立ち止まらず、

剣を抜かず、

ただ進む。


その背に――

視線が集まっていることに、

気づいていた。



最初に声をかけてきたのは、

若い男だった。


「……トヨヒサ殿」


足取りは軽くない。

剣も、使い込まれている。


トヨヒサ

「用件は?」


男は、

深く頭を下げた。


「カネヅグ様の――

 弟子です」


続いて、

もう一人。


そして、

さらに二人。


年齢も、

構えも、

剣の癖も違う。


だが――

全員、剣を捨てていない。


「……俺たちは」


最初の男が、

言葉を選びながら続ける。


「師が……

 殺されたと聞いた」


「剣の眷属の配下……

 魔剣士・ナオマサに」


空気が、

わずかに張る。


トヨヒサは、

視線を逸らさない。


「……ああ」


短く、肯定した。


弟子たちは、

歯を食いしばる。


「復讐を……

 頼みに来たわけじゃない」


別の男が、

そう言ってから、

一歩前に出た。


「……師は」


「勝てないと分かっても、

 剣を置かなかった」


「だから……」


言葉が、

一瞬詰まる。


「俺たちも、

 置けなかった」



トヨヒサは、

しばらく黙っていた。


やがて、

歩き出す。


弟子たちは、

慌てて後を追う。


「……ついてくるな」


男たち

「……」


トヨヒサ

「俺は、

 教えられねぇ」


「剣は、

 人に教わるもんじゃない」


沈黙。


だが――

誰も、離れない。


トヨヒサは、

足を止め、

振り返った。


「……それでも来るなら」


一人ずつ、

顔を見る。


「自分の剣を、

 持ってこい」


「俺の真似をするな」


「復讐に酔うな」


「折れるなら、

 今ここで折れ」


弟子の一人が、

静かに言った。


「……折れました」


「一度、

 全部折れました」


「それでも……」


剣を握る。


「残ったものを、

 確かめたい」


トヨヒサは、

小さく笑った。


「……面倒な連中だ」



その夜。


焚き火を囲み、

弟子たちは名を名乗る。


誰も、

大きな名ではない。


だが――

剣を握る手だけは、

確かだった。


トヨヒサは、

焚き火を見つめながら言う。


「……ナオマサは、

 人じゃねぇ」


「次にやり合えば、

 死ぬ」


誰も、

否定しない。


一人が、

静かに言う。


「それでも……

 師は、

 行った」


トヨヒサ

「……ああ」


「だから、

 止めはしねぇ」


「だが――」


剣に、手を置く。


「俺は、

 殿だ」


「最後まで立つ」


「立てなくなったら、

 その時は――

 先に行け」


弟子たちは、

互いに視線を交わし、

深く頷いた。



翌朝。


街道に、

五つの影が並ぶ。


トヨヒサ。


そして――

カネヅグの弟子たち。


剣は違う。

歩幅も違う。


だが、

向いている先は同じ。


剣の眷属が、

最後に残した剣。


赤き鎧の剣災・ナオマサ。


トヨヒサは、

空を見上げた。


(……集まったな)


(折れなかった剣が)


戦は、

数では決まらない。


だが――

数が、意味を持つ時もある。


その時が、

近づいていた。

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