記録:リリィ=λ(ラムダ)
──《大呪核》・第二断章、起動。
『再生対象:融合実験体コード λ(ラムダ)』
『記録年度:祝暦920年──王政と虚神教の共謀時代』
「これは……私の記憶……?」
リリィが恐る恐る前に進むと、空間に映し出されたのは一つの実験室。
冷たく無機質な部屋に、無数のチューブと刻印魔術が走っている。
その中央に、小さな赤子が眠っていた。
『対象:融合胚胎体λ。父体:貴族系統。母体:選別対象外庶民。
適応因子挿入処理、成功。祝福遺伝子と呪属性耐性を融合開始』
「……え?」
リリィの足が止まる。
それはまぎれもなく、“自分自身の誕生”だった。
人工的に造られた“祝福と呪いの融合体”──
「選ばれざる者を、適応者として再構築する」
それが《λ計画》と呼ばれる禁忌の実験だった。
◆真実:リリィは“王家と虚神教”の共同実験体だった
続く映像の中に、見覚えのある人物が映る。
「……父さん……?」
そこに立っていたのは、王家直属研究院の長──リリィの実の父、カイ・アルグレアス。
彼はこう言い放った。
「祝福は高貴なる血統にのみ許される。だがそれだけでは、真なる神性に届かない。
我々は“呪い”というもう一つの極点を制御する必要がある。
そのための“橋渡し”が、この実験体だ──」
リリィの母は、呪属性因子保持者だった庶民階級の女性。
彼女は“適応のための素材”として利用された。
──祝福の特権階級が、呪いを利用し、自らの支配を永続させるために生み出した存在。
「私は……道具……?」
リリィの声が震える。
「違うだろ」
ロイの声が、空間に響いた。
「お前が何のために作られたかなんて関係ない。
生きて、笑って、俺と歩いてきたのは──お前自身の選択だ」
リリィは涙をこらえながら、ロイを見上げた。
「……でも、私の中にいる“ラムダ”は……その使命を果たそうとしてる。
“適応者の王”として、私を使って……世界を呪いに塗り替えようとしてる……」
《魂反応値上昇──ラムダ人格、覚醒》
そのとき、リリィの身体から禍々しい瘴気が漏れ出した。
「────接続、開始。私が“器”を支配する」
リリィの意識が後退し、瞳が紅く染まる。
「待て! リリィ!!」
ロイが手を伸ばしたが、空間は黒く崩れ、リリィ──いや、《ラムダ》が姿を変えて現れる。
《融合体 λ・顕現体》
《スキル発動:呪装再構築》
《効果:他者の呪装を吸収し、自己進化》
ラムダは語った。
「呪いこそ、進化の証。祝福はそれを妨げる制限だ。
ロイ、お前も気づいているはずだ。
“祝福なき者”が最強に至るという、この世界の矛盾を──」
ロイの拳が、静かに握られた。
「だったら、ぶん殴ってでも取り戻す。リリィを、お前なんかに渡すかよ」
そして、ロイは《完全呪装》を展開する。
《呪装適応:超深層フェイズ・Ω》
《装備:虚無輪・喰魂剣・審罪の棘衣》
「リリィ、お前を連れ戻す。
呪いでも祝福でも関係ねぇ──お前は、俺の妹なんだよ!!」
大呪核内部、適応者vs融合体──兄妹の魂をかけた戦いが始まる。




