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新章・第九話  逆張り男、灰王を回復させる


灰王連合の臨時野営地。


夜明け前。

空が白み始めた頃――

ロイは、はっきりと意識を取り戻した。


「……朝か」


身体は重い。

だが――

完全に沈んでいた時とは違う。


指が、動く。

足先も、感覚がある。


「……?」


次の瞬間。


「お、起きた?」


聞き覚えのない、

軽い声。


ロイが視線を向けると、

そこには――

ありえない男が立っていた。


白シャツ。

ラフなズボン。

剣も、鎧もない。


なのに、

世界の方が緊張している。


「……誰だ」


男は、肩をすくめた。


「通りすがりの逆張り」


にやっと笑う。


「逆刃理央」


ロイの瞳が、

一瞬で鋭くなる。


(……こいつ)


(世界の外側の匂いがする)


ロイ

「何しに来た」


理央

「うーん……」


指で顎を掻く。


「世界がさ、

 ちょっとやりすぎたから」


「バランス調整?」


ロイ

「……俺を弱くした件か」


理央

「そうそれ」


軽い調子で頷く。


「さすがに

 “剣・獣・人”

 三つ削るのは盛りすぎ」


ロイ

「……戻すのか」


理央は、

首を横に振った。


「戻さない」


即答。


「逆張りだからね」


ロイ

「……は?」


理央

「完全回復?

 それ、世界が一番嫌うやつ」


「だから――」


ロイの額に、

指で、軽く触れた。


何かが、

“カチッ”と戻る感覚。


痛みではない。

封印が、少しだけ緩む。


理央

「歩けるくらいにしといた」


ロイは、

ゆっくりと身体を起こす。


……起き上がれた。


足を、地面につける。


――立てる。


「……」


理央

「ほら」


「戦えない。

 全力も出ない」


「でも――

 自分で選んで歩ける」


ロイは、

低く笑った。


「……中途半端だな」


理央

「最高の褒め言葉」


満足そうに頷く。


「それにさ」


理央は、

少しだけ真剣な目になる。


「今、前に立ってるのは

 あんたじゃない」


ロイ

「……トヨフサか」


理央

「うん」


「いい剣だよ、あの人」


「あんた基準で世界を見るの、

 やめさせるために来てる」


ロイは、

黙ったまま拳を握る。


確かに――

力は戻っていない。


だが、

焦りもない。


理央

「だから、

 今のあんたは後ろでいい」


「歩いて、

 見て、

 選べ」


ロイ

「……お前は」


理央

「俺?」


にやっと笑う。


「もう用事ない」


踵を返す。


「世界の調整役なんて、

 長居すると嫌われるから」


一歩。


そして、

振り返らずに言った。


「剣の眷属」


「あれ、

 本気で面白がってるから」


「ちゃんと順番に

 強くならないと、

 殺されるよ?」


次の瞬間。


理央の姿は、

最初からいなかったかのように消えた。



しばらくして。


アークが、

ロイの様子に気づく。


「……立ってます?」


ロイ

「ああ」


「歩ける」


アークは、

一瞬驚き――

そして、笑った。


「十分です」


ロイは、

遠くを見た。


剣塚の谷の方角。


「……前は、

 あいつに任せる」


灰王は、

まだ王座に戻らない。


だが――

再び歩き出した。


それで、

今は十分だった。

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