新章・第二話 祝福より先に、殴る理由
街道沿いの小さな集落。
昼間だというのに、人の姿が少なかった。
家々の戸は閉まり、窓から視線だけが覗いている。
原因は、すぐに分かった。
白い装甲。
金色の紋章。
祝福騎士が三人、広場を占拠していた。
「だから言っているだろう」
騎士の一人が、
地面に座り込んだ老人を見下ろしている。
「祝福を持たぬ者は、
我々の指示に従えばいい」
老人
「……畑を返してくだされ……
あれがなければ、
冬を越せん……」
騎士は鼻で笑った。
「祝福騎士が“徴用”すると言っている。
光栄に思え」
トヨフサは、
その様子を少し離れた場所から見ていた。
セレナが、低く言う。
「……祝福騎士団です。
最近、こういう話が……」
トヨフサ
「ふーん」
剣を担いだまま、
ゆっくりと歩き出す。
セレナ
「トヨフサさん?」
トヨフサ
「ちょっと聞きたいことがある」
◆
祝福騎士が、
近づいてくるトヨフサに気づいた。
「何だ、貴様は」
トヨフサ
「なあ」
騎士
「無礼だぞ。
祝福騎士である我々に――」
トヨフサは、
その言葉を最後まで聞かなかった。
――ドンッ。
拳が、
鎧の上から騎士の顔面に叩き込まれる。
祝福騎士が、
地面を転がった。
周囲が、凍りつく。
セレナ
「……!」
残りの騎士たちが、
慌てて祝福を展開する。
「な、何をする!」
トヨフサは、
拳を振った手を軽く振り、
淡々と言った。
「今のは、挨拶だ」
騎士
「祝福を持たぬ者が……
我々に手を――」
トヨフサ
「違うな」
一歩、前。
祝福の光が、
彼の身体を包もうとして――
何事もなく、抜け落ちた。
騎士たちの顔が、
一斉に引きつる。
トヨフサ
「祝福があるから偉い、
力があるから正しい」
首を横に振る。
「そんな理屈、
日本人には通らねぇ」
騎士
「な……」
トヨフサは、
老人を一度だけ振り返り、
再び騎士を見る。
「年寄りの畑を奪って、
胸張れるか?」
騎士
「それは……
任務で――」
――ドンッ。
今度は、
もう一人の騎士が吹き飛んだ。
トヨフサ
「言い訳すんな」
低く、静かな声。
「力を持ったらな、
守る側に回るんだ」
最後の騎士が、
震えながら後退る。
「……貴様……何者だ……」
トヨフサは、
剣に手を掛けなかった。
ただ、
真っ直ぐに言った。
「通りすがりの日本人だ」
一拍。
「道徳に従え」
その言葉に、
騎士は完全に心が折れた。
祝福を解除し、
逃げるように走り去る。
◆
広場に、静けさが戻る。
老人が、
震える声で言った。
「……ありがとう……」
トヨフサは、
照れたように頭を掻く。
「大したことじゃねぇ」
セレナは、
彼の横で静かに祈る。
祝福ではない、
ただの祈り。
(……ロイさんとは、違う)
(でも……)
(この人も、
間違いなく“前に立つ人”だ)
トヨフサは、
空を見上げて言った。
「力ってのはさ」
セレナを見る。
「振りかざすもんじゃねぇ」
「曲がった理屈を、
まっすぐ殴り直すためにある」
彼はまだ知らない。
この“当たり前”を貫くことが、
この世界では――
革命に等しいということを。
理由を聞く前に殴るのは道徳違反ではあります笑
これは彼の性格です




