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剣は語り、王は沈む_

祝福眷属(人)の身体が、

音もなく崩れ落ちた。


白い光が失われ、

残ったのは――

人の形をした、ただの骸。


トヨフサは、

荒い息を吐きながら剣を下ろす。


「……終わり、か」


返事はなかった。


だが。


次の瞬間。


骸の影が、

不自然に揺らいだ。


ロイの目が、鋭く細くなる。


(……来る)


影が、

ゆっくりと“立ち上がる”。


否。

立ち上がったのは、

影ではない。


剣の輪郭だけが、空間に浮かび上がった。


刃。

柄。

装飾のない、純粋な“剣”。


それが――

声を発した。


『ほう』


低く、静かな響き。


『私の眷属を倒すとは……

 なかなか、やるね』


トヨフサの背筋が、

ぞくりと粟立つ。


(……さっきの“気配”)


ロイは、拘束されたまま、

小さく息を吐いた。


「……やっぱり来やがったか」


剣の眷属

『安心したまえ。

 今は、斬らない』


刃が、

わずかにトヨフサの方を向く。


『君は――

 まだ、未完成だ』


トヨフサ

「……随分、上からだな」


剣の眷属

『剣とは、そういうものだ』


一拍。


そして、

視線のようなものが、

ロイへと移る。


『だが』


『目的は、十分に果たした』


トヨフサ

「……何の話だ」


剣の眷属

『見れば分かるだろう』


その瞬間。


トヨフサは、

はっきりと気づいた。


ロイが――

一切、動いていない。


「ロイ?」


呼びかけても、

反応がない。


祝福の鎖は、

まだ身体に絡みついたまま。


ロイは、

低く、短く言った。


「……今の俺は……

 剣も、前にも、出られねぇ」


トヨフサ

「な……」


剣の眷属

『灰王ロイ』


淡々と、

事実を告げる声。


『祝福による無力化は成功した』


『世界にとって、

 君は危険すぎた』


トヨフサ

「……だから、削いだってのか」


剣の眷属

『そうだ』


『そして、

 その“隙間”を埋めるために

 君が立っている』


刃が、

一瞬だけ強く光る。


『面白い構図だ』


トヨフサ

「……笑えねぇな」


剣の眷属

『安心したまえ』


『今日は、ここまでだ』


トヨフサ

「逃げるのか?」


剣の眷属

『違う』


『見届けた』


一拍。


『次に会う時は』


刃が、

トヨフサの剣と一直線に重なる。


『君が“剣を名乗れるか”

 確かめに来る』


その言葉を最後に。


剣の輪郭は、

影の中へと沈み――

完全に、消えた。



沈黙。


残ったのは、

倒れた祝福眷属の骸と、

動けないロイ。


トヨフサは、

歯を食いしばった。


「……くそ」


ロイは、

わずかに笑った。


「……悪いな」


トヨフサ

「謝るな」


剣を肩に担ぐ。


「動けねぇなら、

 守るだけだ」


その時。


森の奥から、

気配が複数、近づいてくる。


――灰王連合。


バルドル、ガブリエラ、リリィたちが、

即座に状況を察した。


バルドル

「……撤退だな」


ロイ

「ああ」


短く、確実な判断。


「今は下がる」


仲間たちが、

無言で頷く。


ロイは、

トヨフサを見る。


「……前、頼む」


トヨフサは、

即答した。


「任せとけ」


剣を構え、

仲間たちの前に立つ。


祝福の力は、

ここでは通じない。


灰王は沈み、

連合は守られ、

戦場は――完全撤退。


だが。


剣の眷属の言葉だけが、

静かに残っていた。


――次は、確かめに来る。

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