表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/203

──祝福は王を縛り、剣は人を選ばなかった

風が、止まった。


いや――

止められた。


ロイは、ふっと眉をひそめる。


(……来たな)


次の瞬間、

空間そのものが白く染まった。


祝福陣。


地面、空、視界の端。

あらゆる場所に、重なり合う円環が展開される。


トヨフサ

「……なんだ、これ」


ロイ

「下がれ」


その声は、短く、鋭い。


だが――

遅かった。


『確認』


響いたのは、

感情のない声。


人の形をした祝福の塊――

**祝福眷属(人)**が、空間の中央に立っていた。


『対象:灰王ロイ

 祝福理論への致命的逸脱を確認』


ロイは、舌打ちした。


「……チッ」


『拘束を開始する』


白い光が、

ロイの足元から這い上がる。


祝福の鎖。


それは攻撃ではない。

命令だ。


――止まれ

――動くな

――抗うな


ロイの身体が、

ぴくりと震えた。


トヨフサ

「ロイ?」


ロイ

「……っ」


歯を食いしばる。


(くそ……

 抵抗力が……足りねぇ)


以前なら、

この程度の祝福は

“通らなかった”。


だが今は違う。


削がれた六割。

祝福への拒否権は、

確実に弱まっている。


ロイの膝が、

わずかに沈んだ。


トヨフサ

「おい……!」


祝福眷属が、

ゆっくりとトヨフサを見る。


『対象外』


『祝福干渉、無効』


トヨフサ

「……あ?」


ロイが、低く言った。


「……来るな」


トヨフサ

「は?」


ロイ

「今の俺は……

 動けねぇ」


白い鎖が、

ロイの腕を完全に絡め取る。


祝福眷属

『灰王ロイ

 行動停止』


その言葉と同時に――


ロイの身体が、

完全に固定された。


剣を握ることも、

一歩踏み出すこともできない。


トヨフサ

「……冗談だろ」


ロイは、

わずかに顔を歪めながらも、

はっきりと言った。


「……悪い」


トヨフサ

「ロイ……?」


ロイ

「今は……

 俺より……」


視線を上げ、

トヨフサを見る。


「お前の方が、自由だ」


その瞬間。


トヨフサの中で、

何かが――切り替わった。


トヨフサ

「……なるほどな」


背後に手を伸ばす。


そこにあるのは、

灰色の剣。


ロイの剣。


祝福眷属が、

一瞬だけ反応を見せる。


『警告

 当該剣は――』


トヨフサは、

その剣を、迷いなく握った。


何も起きない。


反発も、

拒絶も、

祝福の干渉も。


ただ、

剣が“手に収まる”。


トヨフサ

「……ああ」


剣を構える。


「だから、

 この剣は俺が持てたのか」


祝福眷属

『理解不能

 祝福反応、存在せず』


トヨフサは、

にやりと笑った。


「悪いな」


一歩、前に出る。


「俺、

 祝福の話はよく分かんねぇ」


ロイの背中を、

守る位置。


トヨフサ

「でもな」


剣先を、

祝福眷属へ向ける。


「目の前で

 動けなくなった人間を

 見捨てるほど、

 薄情じゃねぇ」


祝福眷属

『排除対象、再指定』


光が、

トヨフサへ向かって奔流する。


――だが。


すべて、

素通りした。


トヨフサ

「……効かねぇよ」


ロイは、

拘束されたまま、

小さく笑った。


「……頼む」


トヨフサ

「任せとけ」


剣を、低く構える。


型は荒い。

だが、

剣は静かだ。


ロイが教えた言葉が、

胸に響く。


――剣は、振る前に決まっている。


トヨフサは、

一歩踏み出した。


ここから先――

前に立つのは、トヨフサだ。


灰王が最強を取り戻すまで。

この戦場の主役は、

祝福の外に立つ男になる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ