世界の記憶、第一断章
──深淵より、囁く声が響く。
『記録再生開始──“祝福前夜”』
ロイたちの眼前に広がるのは、まるで夢の中のような空間。
大地は浮かび、空は反転し、時間は巻き戻っていた。
「ここは……?」
ルミアが言葉を失う。
そこは、数千年前の“世界がまだ呪いに支配されていた時代”。
「これは、世界そのものの記憶……」
アーク・カースが静かに答えた。
「俺が知るよりもさらに古い時代だ。呪いがすべてだった、絶望の世」
その中でひときわ強く輝く存在があった。
黄金の衣をまとい、人々の前に立つ──“最初の祝福者”。
「人は罪を重ねすぎた。このままでは、自らの呪いで滅ぶ。
だから私は、“神の装置”を設けよう。呪いを封じ、祝福として分配するために」
彼の名は《リヴィウス・エル・フェルゼ》
かつてロイが倒した《神罰装備バルゼリオ》を設計した人物──
ルミアの血を引く、王家の始祖にして“世界の祝福管理者”。
「リヴィウス……? じゃあ、祝福って……」
「そうだ」
アークが頷いた。
「祝福とは、“呪いの力を制御するための枷”なんだ。
本来、呪いは進化の原初エネルギーであり、感情と本能の塊だった。
だが、それが暴走した結果、世界は何度も滅びかけた」
だからリヴィウスはそれを“調律”した。
罪と呪いを“祝福”として一部の者に分配し、管理することで。
『祝福とは、呪いの選別。
祝福を持つ者とは、呪いの統治者。
選ばれざる者は、ただ沈み、消えるのみ』
「それが……この世界の構造だというのか……?」
ロイは拳を握る。
「“呪われた者”は、自分の罪を知らされることもなく、
“祝福を持たない”という理由だけで、見捨てられる存在……?」
映像の中のリヴィウスが振り返り、まるでこちらを見つめるように語った。
「だが、いつか来る。
全ての呪いを受け入れ、制御を越え、限界を超える者が──
私の決断を、真に“終わらせる”者が」
その瞬間、空間が歪む。
再び暗闇に包まれたロイたちの前に、“門”が現れる。
『次の断章へ進みたければ、己の記憶と向き合え──
――汝、呪いを受け入れし者よ』
リリィが顔を上げた。
「私……見なきゃいけない。
私が“なぜ適応できたのか”。お兄ちゃんと違って、“元から異質”だった理由──」
彼女の瞳は、ラムダと共鳴するように光っていた。
「私、行くよ。この呪いの深層へ──」
ロイは頷いた。
「ああ。俺も、見る。
この呪いの始まりと、終わらせ方を……!」
大呪核の第二断章が、静かに開き始める。
──そして彼らは、“祝福の嘘”と“呪いの真実”に迫っていく。




