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──祝福が、触れられない剣

木立の中。


ロイは、灰色の剣を地面に突き立てた。


「……一応言っとく」


トヨフサは、剣を見下ろしながら首を傾げる。


「何をだ?」


ロイ

「その剣、

 祝福持ちは触れねぇ」


トヨフサ

「は?」


ロイは、少しだけ視線を逸らした。


「祝福の力が強いほど、

 反発する」


「剣が拒むんじゃねぇ。

 祝福同士がぶつかる」


トヨフサ

「……面倒くせぇ剣だな」


ロイ

「同意する」


トヨフサは、

半信半疑のまま剣に近づく。


「じゃあ俺は?」


ロイ

「知らねぇ。

 だから見てる」


トヨフサは肩をすくめ、

ゆっくりと柄に手を伸ばした。


――何も起きない。


火花も、

反発も、

圧力もない。


ただ、

静かに、剣がそこにある。


トヨフサ

「……あ?」


そのまま、

剣を持ち上げた。


「……持てるな」


ロイの目が、

はっきりと見開かれた。


「……やっぱりか」


トヨフサ

「何だよその反応」


ロイは、

剣から視線を外さずに言った。


「祝福が……

 一切、反応してねぇ」


トヨフサ

「そりゃそうだろ。

 祝福なんて、

 最初から何も感じねぇし」


ロイは、

短く息を吐いた。


「……それだ」


トヨフサ

「?」


ロイ

「俺はな、

 呪いで祝福を弾いてた」


剣を見つめる。


「だが、お前は違う」


トヨフサ

「違う?」


ロイ

「祝福が入ってねぇ」


トヨフサは、

しばらく黙ってから言った。


「……あー」


「つまり、

 祈りで守られてるってやつか?」


ロイ

「邪魔しねぇ祈りだな」


トヨフサは、

試しに剣を構えた。


刃先が、

ぴたりと止まる。


重さはある。

だが、拒絶はない。


トヨフサ

「……妙だな」


ロイ

「何がだ」


トヨフサ

「この剣、

 力を出せとも、

 抑えろとも言わねぇ」


ロイは、

小さく頷いた。


「祝福も呪いも、

 入り込めねぇ相手だからだ」


トヨフサ

「なるほどな」


一度、深く息を吸い――

剣を振る。


鈍く、低い音。


だが、

刃はぶれない。


ロイ

「……」


トヨフサ

「これ、

 振りやすいってより……

 “邪魔されねぇ”な」


ロイは、

確信した。


(祝福がない。

 呪いも、干渉してねぇ)


(……だから成立する)


ロイ

「この剣はな」


トヨフサを見る。


「祝福の世界じゃ、

 誰にも持てねぇ」


トヨフサ

「俺は?」


ロイ

「お前は、

 祝福の外にいる」


トヨフサは、

大きく笑った。


「変な世界だな」


ロイ

「だが、お前には合ってる」


トヨフサは、

剣を地面に戻し、

真顔で言った。


「なあロイ」


ロイ

「なんだ」


トヨフサ

「この剣、

 あんたが全部取り戻すまで、

 俺が使っていいか」


ロイは、

一瞬だけ考え――


頷いた。


「ああ」


「……お前なら、

 祝福に壊されねぇ」


夕陽が差し込み、

灰色の刃が静かに光る。


祝福にも、

呪いにも属さない手が、

初めてその剣を握っていた。

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