表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/203

◆ 出会いの話

──灰王と、祝福の通らぬ男


森の外れ。


折れた木々と、焼けた地面。

そこに――一人の男が立っていた。


服はボロボロ。

だが、背筋は真っ直ぐ。


両手には、

血に濡れた大剣。


「……ふう」


男は深く息を吐き、

肩を回した。


その足元には、

祝福騎士が三人、倒れている。


いや――

倒された、というより“壊された”。


ロイは少し離れた場所から、その光景を見ていた。


(……妙だな)


祝福騎士の装備は、

本来なら呪い以外を弾く。


だがあの男は、

祝福を受け流すでもなく、無効化するでもなく、

ただ“当たっていない”。


まるで最初から、

祝福という概念が存在しないかのように。


ロイが一歩、踏み出す。


枝を踏む音。


バキッ。


男が、即座に振り向いた。


「……誰だ」


声音は低く、

だが怯えはない。


ロイは両手を軽く上げた。


「通りすがりだ。

 見物させてもらった」


男はロイを一瞥し、

鼻で笑った。


「趣味悪ぃな」


ロイ

「そうでもねぇ。

 珍しいもん見れた」


「……?」


ロイは、倒れた祝福騎士を指で示す。


「祝福、効いてなかっただろ」


男は一瞬だけ目を細め、

すぐに肩をすくめた。


「さあな。

 当たらなきゃ意味ねぇだろ」


ロイ

「……豪快だな」


その言葉に、男はにっと笑った。


「褒め言葉として受け取っとく」


ロイは、男の剣を見る。


構えは荒い。

型も粗削り。


だが――

迷いがない。


(……祈り型か)


ロイは確信した。


この男は、

祝福を拒んでいるわけじゃない。


祝福が入る余地がない。


ロイ

「名前は?」


「トヨフサだ」


短く、力強く。


「そっちは?」


ロイ

「ロイ」


その瞬間。


祝福騎士の一人が、

震える声で呻いた。


「……灰……王……?」


ロイは舌打ちした。


「チッ……バレたか」


トヨフサは、

そのやり取りを面白そうに見ていた。


「有名人なのか?」


ロイ

「悪名高いだけだ」


トヨフサは、

少しだけ笑って言った。


「じゃあ丁度いい」


ロイ

「何がだ?」


トヨフサは剣を肩に担ぎ、

豪快に言い放つ。


「俺、

 強ぇ奴に剣、教わりてぇ」


ロイは、思わず目を瞬いた。


「……は?」


トヨフサ

「さっきの動き。

 無駄がねぇ」


剣を軽く振る。


「俺のは力任せだ。

 勝てはするが、

 “生き残る剣”じゃねぇ」


ロイは、

しばらくトヨフサを見つめてから、

小さく笑った。


「……面白ぇ男だな」


ロイ

「今の俺は、

 最強じゃねぇぞ」


トヨフサ

「知るか」


即答だった。


「今、強ぇならそれでいい」


ロイは、

久しぶりに腹の底から笑った。


「……いいだろ」


剣を抜く。


「一つだけ条件だ」


トヨフサ

「なんだ?」


ロイ

「剣は、

 振る前に決めろ」


トヨフサは、

一瞬だけ考えてから――


にやっと笑った。


「上等だ」


二人の剣が、

静かに構えられる。


この出会いが、

灰王が最強を取り戻す“回り道”の始まりになることを、

まだ誰も知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ