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◆ 第157話 ──速度概念崩壊

祝福の塔・第一層。


世界が、きしんでいた。


白い空間に立つロイとΩ。

その間に――風が吹かない。


アークが目を疑う。


「……空気が……止まってる……?」


バルドルが呟く。


「いや……空気が止まっているんじゃない。

 “二人のせいで動けないんだ”……!」


リリィも震える。


「速すぎて……空気が“反応できていない”……?」



Ωが一歩、踏み出した。


その瞬間、

塔の壁が“ひとつ遅れて”崩れる。


バキャッ!!!!


アーク

「今……何が……!」


バルドル

「Ωが動いた“後”に……世界が追いついて崩れたんだ……!」


Ωはロイを見据えながら言う。


「速度段階──ゼロ

 これは、“速度”ではない。」


ロイ

「へぇ。じゃあなんだよ。」


Ω

「“移動した結果が世界に反映される速度”。

 それが零段。」


ロイ

「説明が面倒くせぇな。」


Ω

「君の動きは……ギリギリ“速度”の概念の中。

 私の零段は……その概念外。」


ロイは鼻で笑う。


「外だろうが内だろうが……

 殴れりゃいいんだよ。」


Ωの瞳が楽しげに揺れる。


「では……証明しよう。」



Ωが消えた。


本当に、消えた。


影も、音も、風もない。


ロイの頭上の瓦礫だけが、なぜか“細かく砕けた”。


リリィ

「ど、どういう……!」


アーク

「ロイさんは……!? ロイさんどこ!?」


バルドル

「ちげぇ……

 ロイは今、Ωの“上”にいる……!」


ガブリエラ

「えっ……見えない……」


バルドル

「違う……“速すぎて、見えてないだけだ”……!」



ロイは Ωの拳を受けていた。


…………

…………

……いつの間にか。


ロイ

(……マジかよ……)


腕がしびれ、骨がわずかに軋む。


Ωの拳は“当たった後に気づく”速度だった。


Ω

「灰王。

 君の速度解放《Re:Ash》は優秀だ。

 だが──まだけ。」


ロイは口角を上げた。


「……それはこっちの台詞だ。」


Ω

「ほう?」


ロイ

「“世界”はお前に合わせてるんだろ?」


Ω

「そうだ。」


ロイ

「“俺”は世界に合わせてねぇ。」


Ω

「……?」


ロイは灰剣を超低姿勢で構えた。


「だから──

 お前の“外側”を殴れる。」


Ωの表情が初めて揺れた。


「外側……?

 速度の?」


ロイが嗤う。


「見せてやるよ。

 俺の“外側”。」



灰が舞う。


世界が逆光を浴びたように暗くなる。


ロイの周囲の“線”が歪む。


アーク

「な、なんだこれ……

 世界が……ロイさんを……嫌がってる……!」


リリィ

「呪いが……速度に干渉してる……!?」


バルドル

「ロイ……お前まさか……!」


ロイの速度が、

“反転した”。


Ω

「……ッ!!?」


ロイ

「灰反転《Re:Ash》第二段階──」


灰が爆ぜ、塔が震えた。


「“速度反転スピードリバース”」


Ωの姿が、

世界から“遅れて見えた”。


Ω

「これは……!」


ロイは笑った。


「お前は世界の速度に合わせて動ける。

 俺は世界を無視して動ける。


 どっちが速いかなんて──

 言うまでもねぇだろ。」


Ωの瞳が大きく揺れた。


「……興味深い……!

 灰王ロイ……君は速度の概念を──

 **“裏返した”**のか……!」


ロイ

「第二ラウンドだ。

 逃げんなよ。」


Ω

「逃げる?

 あり得ない。」


白光、爆裂。

灰、逆光。


世界の線が“二つの速度”で裂けた。


見えない戦いが──再び始まる。

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