◆ 第155話 ──速度を超えた速度
空気が張り詰める。
ロイの灰が舞い、
Ωの白光が揺れる。
次の瞬間、
塔の床が“裂けた”。
バキッ!!
リリィ
「っ!? え? ロイさん……動いてないのに……床が……!?」
エファトが冷静に分析する。
「違う。
“二人とも速すぎて、誰も見えていない”んだ。」
バルドル
「……これが……次元が違う戦い……!」
◆
ロイはΩの一撃を受け止めていた。
反射的に灰剣で弾いたが──
腕がしびれ、感覚が飛ぶ。
ロイ
(速ぇ……!?)
Ωは微笑む。
「君の反応速度……面白い。
だが──足りない。」
消えた。
本当に“消えた”。
ロイ
「っ──!」
背後から白光が走る。
ギィン!!
ロイは咄嗟に剣で受けた。
だが、受けただけで地面にクレーターが生まれる。
Ω
「祝福速度──七段。」
ロイの眉がひくりと動く。
「段ってなんだよ……」
Ωは淡々と解説した。
「祝福の出力を速度特化に割り振る技術だ。
七段に入れば、収束光さえ視認できない。」
ロイ
「そりゃまた……面倒な技を……」
Ωがふっと消える。
速すぎて空気が揺れ音が遅れてくる。
瞬間、ロイの頬が切れた。
ピュッ
リリィ
「っ……ロイさんが……傷を……!!?」
ガブリエラ
「嘘……ロイさんが……攻撃を……受けてる……!」
バルドルは歯を食いしばる。
「Ω……“速さ”でロイを上回っている……!」
Ωがロイの前に現れ、
白光を放ちながら告げる。
「灰王ロイ。
君の強さは認める。
だが──“速度”は私が上だ。」
ロイは口元の血を拭いながら笑った。
「いいじゃねぇか。
久しぶりに“殴り合う価値のある奴”に会った。」
Ω
「嬉しいか?」
ロイ
「当たり前だ。
“強ぇ奴”は大好物だ。」
Ωの瞳に冷たい光が走る。
「なら──もっと見せてやる。」
白光が爆ぜた。
祝福速度が“八段”に入った瞬間、
ロイの体が吹き飛ばされた。
ドッ!!
壁を三枚ぶち抜き──
ロイの身体が塔外へ投げ出されそうになる。
アーク
「ロイさん!!!」
リリィ
「いや……ロイさんが……押されてるなんて……!」
◆
瓦礫の中からロイが立ち上がる。
腕が痺れている。
筋肉の奥が焼けるように痛む。
ロイ
「……っ……
こりゃ……やばいな。」
Ωは優しい声で告げる。
「さぁ、灰王。
君の速度では──私には勝てない。」
ロイは灰剣を握り直し、
口角を上げた。
「……だろうな。」
Ω
「……?」
ロイは軽く息を吐く。
「だが──
“背中”を守るためなら、俺は速くなる。」
塔の入口から仲間たちが見える。
アークの震える目。
リリィの祈り。
バルドルの決意。
ガブリエラの涙。
エファトの笑顔。
ロイ
「俺には……理由がある。」
灰が舞い、世界が震える。
Ωの表情がわずかに変わった。
「……まさか──
“速度の反転”……?」
ロイは笑う。
「さて。
そろそろ“本気”を出すか。」




