◆ 第154話 ──灰と祝福、正義の開戦
祝福の塔・第一層。
白い空気が張り詰め、
世界が呼吸をやめたように静かだった。
その静寂を破るように、
白銀の青年──Ω(オメガ)が一歩前へ進む。
ロイは無造作に灰剣を肩へ乗せたまま、
ふっと笑った。
「ようやく出てきたな。“塔の化け物”。」
Ωは眉一つ動かさず答える。
「灰王ロイ。
君は“祝福世界の逸脱因子”。
排除対象であり、修正対象だ。」
リリィが震えながらロイの背中を見る。
「し、修正対象って……」
バルドルが剣を握りしめ、低く呟く。
「こいつ……人間じゃねぇ……」
Ωは冷ややかな視線で仲間たちを見回す。
「人間は祝福に従い、
祝福に守られ、
祝福の意志に沿って生きる……
それが“正しい”世界。」
ロイは大きく欠伸した。
「あー……はいはい。
その“正しさ”とやらを押し付けんなよ。」
Ω
「押し付けではない。
祝福は絶対だ。
世界がそれを求めている。」
ロイ
「世界より俺の方がよく知ってる。
少なくとも“お前よりは”な。」
Ωの瞳が冷たく細められる。
「理解不能だ。
祝福適性ゼロの落ちこぼれが、
なぜそこまで俯瞰視点を持てる?」
ロイは灰剣を軽く地面に突いた。
「呪いのおかげだよ。
世界のほころびが見えるんだ。」
Ω
「……呪い。
不純物の塊。
祝福世界の敵対要素。」
ロイ
「だから言っただろ。
“押し付けんな”って。」
アークが一歩出ようとするが、
バルドルが腕で制した。
「アーク、今は出るな。
この二人……別次元だ。」
リリィも祈りながら呟く。
「ロイさん……負けないで……」
Ωは静かに構えた。
その姿勢は、無駄が一切ない。
「灰王ロイ。
君が存在する限り、世界は平和にならない。
祝福の塔は結論を出した。」
ロイ
「言ってみろ。」
Ω
「灰王は──“世界の誤差”」
ロイ
「なら、“正解”ごと斬ればいい。」
Ωの周囲に祝福光が渦を巻く。
ロイの足元では灰が舞い踊る。
灰と祝福。
呪いと正義。
全てがぶつかる瞬間。
Ωが小さく呟く。
「──始めようか。
“正義の更新”を。」
ロイが笑う。
「おう。
“お前の正義”を粉々にしてやるよ。」
塔が震えた。
そして――
二人の最強同士の戦いが始まる。




