◆ 第151話 ──祝福の塔、最終祝福体の誕生
祝福の塔・最深区画。
そこは人の気配すらない、白い無音の部屋だった。
空気そのものが冷たく、
祝福光だけが脈動し続ける空間。
中央には巨大な祝福炉心が浮かび、
塔全体へ力を流し続けている。
その周囲で、十数人の“強者”たちが倒れていた。
議会の審問官長、
特級祝福者、
祝福研究者のエリート、
そして塔を守護する最高位の騎士たち。
彼らは皆、生きていた。
しかし――動けない。
「……バケモノだ……
祝福の炉心が……人を取り込んでいる……」
呻くように声が漏れた。
塔の奥深く、
巨大なコアはゆっくりと形を変容させていく。
祝福炉心が砕け、重なり、
機械のように白い羽片が生え、
そこへ“強者たちの祝福”が取り込まれていく。
祝福適応、槍術、聖魔法、聖剣技、
治癒、分解、未来視、祝福増幅――
次々と吸収され、
ひとつの“形”に統合されていく。
塔の警報が鳴り響く。
「最終祝福体──統合率90%」
「人格形成開始」
「祝福運算……最適化」
コアの中心に、“人の影”が浮かび上がった。
青年とも、騎士とも、神像とも取れる輪郭。
ゆっくりと目が開く。
真っ白な、祝福に染められた瞳。
「……名を……与えよ……」
塔のシステム音声が答える。
「識別コード:Ω(オメガ)」
青年はうっすらと微笑んだ。
「……最後の祝福。
この身こそ、正義の終着点。」
立ち上がると同時に、
塔内にいた全員が押しつぶされるように地面へ伏した。
尋常ではない“存在圧”。
倒れた強者の一人が震える声を上げる。
「な……なんだ……これは……
祝福が……暴走して……」
Ωはその男を見下ろした。
「暴走ではない。
最適化だ。」
その瞬間、男の祝福が強制的に吸い上げられる。
悲鳴を上げる暇もない。
Ωは淡々と歩き出した。
「祝福に価値がない者は不要。
正義に不要な者は排除。
塔の最終命令に従い──
私は“祝福の敵対者”を滅する。」
その“祝福の敵対者”の名は――
灰王 ロイ。
Ωは静かに呟いた。
「灰王。
君は、祝福の“欠陥”だ。」
塔の光が全て彼のものに吸い込まれ、
物語が動き始める。




