◆ 第150話 ──祝福の塔、突入前
祝福炉心兵たちが倒れ、
戦場にはようやく静寂が戻った。
しかし、その静けさには
“嵐の前触れ”のような不穏な気配があった。
大地の向こう――
天へ伸びる白い塔が見える。
祝福の塔。
議会の心臓部であり、
全ての祝福の根源が収束する場所。
アークがごくりと喉を鳴らす。
「……あそこに、行くんですね。」
ロイは灰剣を肩に担ぎ、軽く笑った。
「あぁ。
議会の連中を……叩き起こす時間だ。」
バルドルも表情を引き締める。
「いよいよか……
楽な戦いではないぞ。」
リリィは不安げに指を胸に当てた。
「ロイさん……危なくなったら……」
ロイ
「逃げろ?」
リリィ
「違います!
絶対に……生きて帰ってきてください……!」
ロイ
「おう。」
◆
その時、レオンが前に出た。
まだ体には痛みが残っているが、
瞳は意思を宿していた。
「ロイ……アーク……
僕たちも一緒に戦います。」
アークは驚く。
「レオン……!」
ロイは首を振った。
「ダメだ。」
レオン
「なぜだ!?
僕はもう操られていない……!」
ロイ
「だからだよ。」
レオン
「……?」
ロイは真っ直ぐレオンを見た。
「お前は“救われた側”だ。
ここから先は、救われた奴が背負う場所じゃねぇ。」
アークの同期たちが息をのむ。
「ロイさん……」
ロイは続けた。
「今のお前らは……
この世界で一番“生きる権利”を持ってる人間だ。
だったら、生きろ。」
レオンは唇を震わせた。
「……僕たちは……弱かった。
守られた……救われた……
それでも……!」
ロイは肩をすくめた。
「なら、守れるようになってから戻ってこいよ。
今は──邪魔だ。」
レオン
「……っ!」
一瞬の沈黙。
だがレオンは、
その言葉の裏に込められた“本心”に気づいてしまった。
(……ありがとう、ロイ。)
彼は静かに頭を下げた。
「わかった。
僕たちは……避難民たちの護衛をします。
彼らを必ず守る。」
アークが笑顔で言う。
「レオン……頼んだよ。」
同期たちも誇らしげな表情で頷く。
「アーク……絶対、生きて戻ってきてね!」
「ロイさんも……気を付けて!」
「私たちは……あなたたちの背中を守ります!」
ロイは背を向けて歩きながら手を振った。
「邪魔が入らねぇなら、それでいい。」
リリィが優しく微笑む。
「また会いましょう。
今度はゆっくり話せるといいですね。」
ガブリエラも涙目で手を振った。
「無事で……無事で戻ってきてください……!」
レオンたちは戦線から退き、
避難民を連れて安全圏へ向かう。
その背中は、
“弱かった同期たち”ではなく──
未来を守る騎士の後ろ姿だった。
◆
ロイたちは祝福の塔を見上げる。
塔は晴れ空にも関わらず、
頂上だけが黒雲に覆われている。
アークが息を整える。
「ロイさん……
僕も、ついにここまで来れました。」
ロイは笑った。
「ここからが本番だ。
“盾”……頼むぞ。」
アークの胸が熱くなる。
「はい!
僕は……僕の信じた道を貫きます!!」
バルドルが剣を掲げる。
「灰王連合──前進!」
リリィとガブリエラが後衛として並ぶ。
エファトはその横で、ひらひらと手を振った。
「大丈夫、僕もいるからね!」
ロイは灰剣を掲げ、
にやりと笑う。
「行くぞ。
“正義の塔”をぶっ壊しに。」
灰王連合、祝福の塔へ突入開始。




