◆ 第148話 ──運命を逆張る者たち
大地を震わせながら、
白銀の巨影がいくつも降り立った。
祝福炉心兵──コアナイト。
レオンが蒼白になり、震える声をこぼす。
「……嘘だ……
まさか……こんな……!」
アークが支える。
「レオン、知ってる人……なの?」
レオンは首を振れずに呟く。
「“弱かった同期”たちだ……
戦闘評価が低くて……
よく僕の後ろを歩いていた……
僕が……守るって決めていた子たちだ……!」
アークの胸が凍りつく。
(あの子たちが……
こんな姿に……?)
レオンは苦しげに続けた。
「議会は……
“才能のない騎士は、素材として有用だ”
そう言っていた……!」
ロイはため息をつく。
「最低だな。
人を“材料”扱いかよ。」
バルドルが眉をひそめる。
「アーク……覚悟はあるか?」
アークは震える槍を強く握った。
「ある……!
でも……殺したくない……!!
だってあの子たちは……
僕と同じ夢を見ていた……“騎士”なんだ……!」
ロイは静かに言う。
「じゃあ、殺さねぇよ。
救える方法を探す。」
アークは涙をこぼしながら頷いた。
◆
だが、コアナイトは容赦ない。
祝福炉心が脈動し、
白銀の剣がアークに迫る。
レオンが叫ぶ。
「アーク、下がれ!!
彼らはもう……!」
ロイが割って入る。
灰剣が一閃。
しかしロイの刃は奴らの身体を避けて振るわれ、
“祝福の制御線”だけを切り裂いた。
バチッ!!!
コアナイトの動きが一瞬だけ止まる。
バルドルが驚く。
「ロイ……!
また境界だけを……!」
ロイは歯を食いしばる。
「……だがダメだ。
祝福炉心が深すぎる……
“人格そのものが消されてる”……」
アークの膝が崩れる。
「そんな……
じゃあもう……助けられない……?」
その瞬間だった。
空間が裂けた。
まるで絵画にナイフを入れたように、
風景そのものが亀裂を走らせる。
バルドルが叫ぶ。
「何だ!? 次元が……破られている!!」
裂け目の奥から、
軽い調子の声が響いた。
「いやぁ〜、久しぶりだね!ロイくん!」
アークが目を丸くする。
「え、エファト!?」
次元裂からエファトがひょいと出てきた。
その隣には――
異様な雰囲気を持つ男が立っていた。
髪は逆立ち、
目は鋭く、
口元は常にニヤついている。
その男は肩をすくめて手を挙げた。
「よう。逆刃理央。
“逆張りの理”を司る、
世界一ひねくれた男だ。」
ロイが眉をひそめた。
「なんだよその自己紹介……」
エファトが説明する。
「彼はね、
“確定した運命をひっくり返す”
という、とんでもない能力を持ってるんだ。」
アークが目を見開く。
「運命を……ひっくり返す……?」
理央はコアナイトを見て、ニヤリと笑う。
「“お前らは素材として死ぬ”
という運命らしいが……」
灰王の横を通り過ぎ、
コアナイトへ指を向ける。
「俺は、その“既定路線”が大嫌いだ。」
次の瞬間――
理央の足元に黒い魔法陣が展開し、
空間が裏返るように波打った。
「──《逆転因果・運命破断》」
白銀の身体に刻まれた“運命式”が弾け飛ぶ。
コアナイト全体に亀裂が走り、
祝福炉心が悲鳴のように叫ぶ。
レオンが涙をこぼす。
「やめろ……!
彼らは……ただ必死に……生きようとしただけなのに……!」
理央は鼻で笑う。
「安心しな。
斬ってるのは“運命”だけだ。」
祝福の光が吹き飛び――
コアナイトの全身を覆っていた“呪いの未来”が砕けた。
その下から現れたのは……
かつての“人間”の姿だった。
アークが叫びながら駆け寄る。
「ミナト!!
カイ!!
レナ……!!」
弱かった同期達が、
涙を流しながら意識を取り戻した。
「アーク……?
本当に……?」
アークは泣き笑いしながら、仲間たちを抱きしめた。
ロイは腕を組みながら、理央を見た。
「……助かった。礼を言う。」
逆刃理央は鼻で笑った。
「礼なんざいらねぇよ。
俺は“逆張りしたい”だけだ。」
エファトが嬉しそうに笑う。
「これにて、コアナイト計画は崩壊だね。」
ロイは灰剣を肩に担いだ。
「さて……
後は“議会本体”ぶっ壊せば完了だ。」
レオンも静かに頷いた。
「アーク……
そして皆で……終わらせよう。」




