◆ 第146話 ──祝福の檻
アークとレオンの槍と剣がぶつかり合うたび、
金属音が空に弾けた。
レオンの剣筋は、あまりにも美しかった。
かつてアークが憧れた、完璧な剣。
「レオン……!
やっぱり君は……僕なんかよりずっと強い……!」
レオンは悲しげに言う。
「アーク……君は変わってしまった。
でもそれでも……守りたいと思った。」
アークの胸が締め付けられる。
(レオン……やっぱり……優しいんだ……)
だが次の瞬間。
レオンの瞳が、
不自然に光を帯びた。
――白い、無機質な光。
アークが震える。
「レオン……その目……!」
レオンの声が、途端に平坦になった。
「対象:灰王連合。
殲滅優先度──最上位。」
アークは言葉を失う。
「っ……祝福の……制御……?」
レオンの動きが変わった。
感情のこもった剣ではない。
死を効率化する、冷徹な機械の斬撃。
アークの槍が吹き飛び、
地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
リリィが叫ぶ。
「アークさん!!」
ロイは眉をひそめた。
「……あれ、“自分の意思じゃねぇ”な。」
バルドルが唸る。
「あぁ。
祝福が本人の人格を乗っ取っている……!
本来のレオンは、もっと……穏やかなはずだ!」
レオンはアークへ剣を向けた。
「対象……排除。」
アークは地面に手をつきながら、震える声を絞る。
「レオン……っ
君はそんな人じゃない……!!
僕を励ましてくれた……
僕を対等に見てくれた……!!
“君は強い”って……言ってくれた……!」
レオンの瞳は揺れない。
無感情に祝福光が脈打つ。
「記憶領域……不要。排除。」
アークの叫びが戦場に響く。
「返してよ!!
僕の……大切な同期を返してよ!!」
◆
レオンは人間とは思えない速度で突撃する。
アークの心臓を狙う、殺意の剣。
だがその刃は――
ロイの灰剣が受け止めた。
火花が暴れ、地面が抉れ、
戦場全体が震える。
レオンは感情のない声で言う。
「識別……呪われし者ロイ。
最優先敵性対象──灰王。」
ロイはつまらなそうに言った。
「お前……“操られてる”だけだろ。」
レオンの瞳が白く光る。
「祝福は絶対。
我らは光の意志に従う。」
ロイは呆れたように鼻を鳴らした。
「ふざけんな。
アークが大事にしてる奴が、こんな壊れた喋り方するわけねぇだろ。」
レオンの剣がロイの首元に迫る。
アークが絶叫する。
「ロイさん!!
レオンを傷つけないで……!!
だって、彼は……!」
ロイは、ほんのわずかだけ笑った。
「分かってるよ。“盾”。」
灰剣が構えられる。
「壊すのは……こいつじゃねぇ。
操ってる“祝福だけ”だ。」
バルドルが息を呑む。
「ロイ……お前、まさか……!」
リリィも震えて呟いた。
「ロイさん……祝福だけを……切る……?」
ロイは無造作に前へ歩いた。
レオンに向かって。
「あぁ。
だってこいつ……
本当は優しい奴なんだろ?」
アークの目から涙が落ちる。
――次話、147話でロイが“祝福の洗脳そのもの”を斬り裂きます。




