◆ 第144話 ──灰王、戦線を貫く
黒鉄の機兵たちが、
まるで大地を噛み砕く獣のように迫ってくる。
刃の擦れる金属音、
魔力駆動の唸り、
そして兵士たちの怒号。
だがロイは――笑っていた。
「雑魚が百体いようが千体いようが……
“質”が同じなら、ただの経験値だろ。」
機兵の一体が蒸気を噴きながら突撃。
人間の何倍もある鉄の質量を――
ロイは灰剣一本で斬り伏せた。
金属が、紙のように裂ける。
「はっ、脆ぇな。」
爆散した機兵の破片が飛び散るが、
ロイとバルドルは微動だにしない。
◆
背後のアークは仲間に向けて叫ぶ。
「洞窟まであと少し!
怯えないで!僕たちが守る!!」
リリィがその周囲に風壁を張る。
ガブリエラは治癒光を切らさず、人々を支える。
「大丈夫……!
灰王連合がいる……!」
逃げ惑っていた村人の表情が、
次第に希望へと変わっていく。
◆
だが、議会は第二波で終わらなかった。
空中でいくつもの魔法陣が展開され、
そこから黒鉄の杭が落ちてくる。
「“拘束封印陣・多重拘束式”展開――
対象:灰王ロイ!!」
兵士全員が詠唱を揃えた。
バルドルの顔が険しくなる。
「まずい!これは……祝福支援魔術の複合だ!!
ロイ、お前でも――」
「止められるわけねぇだろ。」
ロイは灰剣を振り上げた。
灰が渦巻き、世界そのものが唸る。
「俺のマイナスは……
“束縛”なんざで止まる値じゃねぇ。」
落ちてくる黒鉄の杭が、ロイの頭上に迫る。
アークが絶叫する。
「ロイ!!!」
ガブリエラが震えながら祈る。
「お願い……ロイを……!」
村人たちも目をつぶる。
――しかし。
黒鉄の杭はロイの頭上で、
まるで“神に触れた”かのように砕け散った。
音すらなく、灰へと変わっていく。
兵士たちが凍りつく。
「な、なんだ……!?
封印が……消えた……?」
ロイは退屈そうに鼻を鳴らした。
「俺を縛れるのは、退屈か、睡眠ぐらいだ。」
◆
その瞬間。
灰剣の刃が、白い光を帯びた。
バルドルが目を疑う。
「ロイ、その剣……“進化”している……!!
呪いの濃度が、祝福を喰っている……!」
リリィが息を呑む。
「……ロイさん……今、何が……?」
ロイは肩を回す。
「知らねぇけど、
“強くなる理由”があるなら悪くねぇ。」
灰王ロイ。
新段階へ。
◆
議会軍は後退しながら叫ぶ。
「距離を取れ!!
灰王が……また進化している!!」
「反逆審問官第三波を――!」
しかしバルドルが前に出た。
大地を割るような声で叫ぶ。
「逃がすかよ。
今日の“正義”は……俺たちが決める!!」
ロイが笑った。
「バルドル、やっと言ったじゃねぇか。」
二人の間で、
聖と灰が共鳴し――
戦場に轟音が走る。
◆
アークは村人の避難を完了させると、
槍を握り直して戻ってきた。
「ロイ!
僕も戦える!!」
ロイは横目で見た。
「なら“盾”。
俺の背中は任せた。」
アークの胸が熱くなる。
(僕は……
ロイさんの“仲間”なんだ……!)
アークが叫ぶ。
「灰王連合、反撃――開始!!」
その声に、
ロイは満足そうに笑った。
「良いぞ。“盾”。
本番はここからだ。」
灰王連合、
本格的に戦線を押し返し始める。




