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『議会の牙 ― 破滅聖女ガブリエラ ―』 ◆

王都議会。


巨大な円卓の中心に、

黒い布で覆われた拘束台があった。


イストラム議長がその前に立つ。


「光も、正義も、自由も……

人は愚かゆえに誤る。」


議員たちがざわめく中、

議長は布を剥ぎ取る。


そこには――


輝く輪を背負った少女が拘束されていた。


白い衣。

青い瞳。

涙の跡が頰を濡らしている。


しかしその涙は

怯えからか、怒りからかは分からない。


イストラムは優しく囁く。


「さぁ、目を覚ましなさい……

破滅聖女セイントブレイカー――ガブリエラ。」


少女――ガブリエラは、

ゆっくりと目を開けた。


「……アークは……無事……?」


その名が出た瞬間、

議長は醜く笑った。


「彼は裏切り者だ。

灰王の手先となり、人類の敵になった。」


ガブリエラの瞳が震えた。


「そんな……嘘……」


「嘘ではない。

お前が守ろうとした者は、

今や人々を地獄へ導く者なのだ。」


その言葉は、

ガブリエラの心を深く抉る。


彼女は叫んだ。


「アークは……正義の騎士です!!

誰よりも人を想う……

優しい人です!!」


イストラムは穏やかに頷いた。


「だからこそ、救うのだ。

アークの正義を取り戻すため、

お前が力を使うのだ。」


ガブリエラの背にある六枚の光輪が、

黒く濁り始める。


「アークを……救う……」


「そうだ。」

議長は囁く。

「灰王を殺し、アークを連れ戻せ。」



森の中、灰王連合。


アークは火のそばで仲間の新加入を祝っていた。


バルドルは不器用に座り、

リリィが差し入れたスープを飲む。


「……悪くない。」


対してロイは一言。


「もっと肉が欲しい。」


「はいはい。」

リリィが笑って応じる。


アークはその光景に、

胸が暖かくなるのを感じていた。


(ここが……僕の居場所なんだ)


そして思い出すのは、

議会時代にずっと支えてくれた少女のこと。


「ガブリエラ……

君にも、いつか……」


その穏やかな願いは――

次の瞬間、破られる。



空が裂けた。


光輪が六つ、狂気のままに回転する。


「……アーク……」


白衣の少女が降り立つ。


だがその瞳は――虚ろ。


アークが叫ぶ。


「ガブリエラ!?

本物なのか!?どうしてここに――」


ガブリエラは泣きながら叫んだ。


「アークを……救いに来た……!!

アークは 灰王に操られている!!」


アークの心臓が締め付けられる。


「違う!!僕は自分の意志で――」


「嘘言っちゃダメだよ、アーク……!」


涙が溢れる。


「ねぇ、一緒に帰ろう……

もう間違わなくていいから……!」


ガブリエラの光輪が、黒く輝く。


「灰王を殺せば、救われる」


議会に刷り込まれた“救済の呪い”。


アークは震える声で拒絶する。


「ガブリエラ……

それは……正義じゃない!!」


ガブリエラの表情が崩れる。


「違わない!!

私はずっと祈ってきた!!

正しさを失ってまで……

アークを救いたいなんて……望んでない!!」


悲痛な叫び。


その言葉は――

アークの胸を貫いた。



ロイがアークの肩に手を置く。


「……アーク。

決めろ。」


アークが震えながら振り返る。


ロイは短く言う。


「お前の正義は、誰のためのものだ?」


アークは唇を噛む。


(僕は……ガブリエラが……

救われて欲しい……)


その想いが、

言葉となって溢れた。


「ガブリエラ。

僕は君を“救いたい”!!」


ガブリエラは涙を流し、

白い光輪を開く。


「じゃあ殺して!!

灰王を殺して――!!」


アークの手が震える。


(彼女を守りたい。

でも……ロイさんを裏切るわけにはいかない)


揺れる視界で、

ロイの背中が揺らめいて見えた。


リリィの涙が見えた。


バルドルの拳が震えているのが見えた。


アークは槍を握り直す。


「ガブリエラ……

君の正義は、届いてない……!」


ガブリエラは叫ぶ。


「アーク……裏切るの……!?」


アークは叫び返す。


「僕は誰も裏切らない!!!

だから――

君を止めるんだッ!!!」


光と灰の戦いに、

新たな“狂気の正義”が参戦する。


友情と愛と誤解が交錯し、

戦場は涙で濁る。



最後に、ガブリエラの声が響いた。


「――私を救ってよ、アーク……!!!」


アークの槍先が震える。


正義が、試される。

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