『審問官戦 ―光と灰の連携―』 ◆
黒鉄の審問官オルデールが迫り、
その拳が地を割って突き進む。
「人類の秩序に反する者はすべて――排除する。」
アークが槍を構えた。
「排除なんてさせません!
僕は……僕が信じた自由を守る!!」
光の槍と、黒鉄の拳が激突。
ガガァァン!!!
衝撃波が周囲の木々をなぎ倒す。
アークの体は後方へ吹き飛ぶ――
だが。
ロイの腕が彼の背を支えた。
「立てるか。」
「もちろんです!!」
ロイは灰の剣を肩に乗せたまま、
敵へ視線を向ける。
「なら行け。
俺が全部、斬り開く。」
灰の斬撃が地を這い、
オルデールの足元を絡め取る。
アークの道が――まっすぐ開く。
◆
オルデールが揺らぎながら分析を始めた。
「灰王の力……未知の呪い……
危険因子……最優先排除対象……!」
アークが跳躍。
光の槍が一直線に黒鉄へと突き刺さる。
ドゴォン!!!!
衝撃で装甲の表面が歪む。
「効いた……!」
オルデールの仮面が、アークを捉えた。
「裏切り者……貴様は赦されない。」
アークは叫び返す。
「裏切ってなんかいない!!
僕は――正義を捨ててない!!」
ロイが笑いながら口を挟む。
「よく言った。
じゃあお前の正義、俺と並べ。」
灰王の声が燃料となり、
アークの光がさらに強くなる。
◆
しかし。
オルデールの鉄輪が回転を始める。
ゴウン……ゴウン……
「審問機能、起動。
対象の罪状分析を開始する。」
アークの周囲に黒い文字が浮かぶ。
【裏切り】【反逆】【洗脳】【危険因子】【抹殺対象】
アークの心に黒い声が刺さる。
「罪を……背負え……
お前は……灰王の手先だ……」
槍が震え、膝が折れそうになる。
(僕は……裏切り者……?
議会にも、仲間にも……)
◆
その肩に、
静かに手を置く者がいた。
リリィ。
「あなたは、裏切ってない。
信じるものを……選んだだけ。」
その瞳は涙を宿しながら、まっすぐ。
「私はちゃんと見てます。
あなたが……人を助けてくれたことを。」
アークの胸が熱くなる。
リリィが続ける。
「罪って言うのは、
“誰かを想った証”なんだよ。」
アークは槍を握り直し、
痛いほど強く叫んだ。
「僕は――
ロイさんの背中を見て、自分の正義を選んだ!!
それが罪だと言うなら……!!」
オルデールを見据える。
「背負ってみせる!!!」
◆
オルデールの巨体が大きく揺れる。
「解析不能……矛盾……矛盾……!」
アークが地を蹴る。
光の槍が鋭く突き出され――
バキィィン!!!
装甲に大きな亀裂が入った。
ロイがすれ違いざまに低く囁く。
「いいぞアーク!
お前は俺の盾なんだからな!!」
アークの顔が真っ赤になった。
「そ、そう言わないでください!
恥ずかしいです!!」
ロイはニヤリと笑う。
「俺は照れねぇぞ。」
リリィが頬を膨らませる。
「ロイの言い方はちょっと問題あります!」
戦場の真ん中なのに、
少しだけ笑いが生まれた。
その一瞬が、
アークの心の恐怖を完全に吹き飛ばした。
◆
オルデールの鉄輪が悲鳴をあげる。
「解析……破綻……!!
新たな罪状生成――
“灰王連合”!!!」
その言葉を、ロイが笑う。
「いいねぇ。それ、採用だ。」
アークが光の槍を大きく構え直す。
「行きます!!」
ロイの灰がアークを後押しし、
リリィの祈りが心を支える。
三人の力が一つとなり――
ズドォォン!!!!
オルデールの胸へと、
正義の槍が貫かれた。
「――完了。」
黒鉄の巨体が崩れ、
光の中で爆ぜた。
◆
静寂。
アークは荒い呼吸のまま、
膝をつく。
ロイが手を差し伸べる。
「立て。“盾”が倒れてちゃ困る。」
アークはその手を掴む。
「はい……ロイさん。」
リリィが微笑む。
「お疲れ様です、アークさん。」
アークは気づいた。
(この瞬間を……
僕はずっと求めていたんだ。)
背中を預け合える仲間。
正義を笑い合える自由。
ここに――ある。
◆
しかし。
倒れたオルデールの仮面の裂け目から、
一枚の紙が落ちていた。
アークが拾う。
そこには、歪んだ文字。
次の審問官が来る
“彼”はもう止められない
灰王を神の座から引きずり下ろせ
アークはその文言を見て凍りついた。
「“彼”……?」
ロイが紙を引ったくり、
苦々しい顔で呟く。
「……まさか。
王家直属部隊の……あいつか。」
アークは息を飲む。
ロイは遠い空を睨み――
「こっからが本番だ。」
夜風が吹き、
灰の灯火が揺らぐ。
次回予告
第三部 第十話
『神座に座る者 ―白銀の聖騎士バルドル―』
生きていたあの男。
今度は、議会の“聖なる牙”として現れる。
アークとロイの因縁が、
交錯する。




