『裏切り者の旗』 ◆
騎士たちの怒号が響く。
ラーメルが叫ぶ。
「アーク!貴様は終わりだ!!
世界の敵と共に堕ちろ!!」
アークは槍を構え、背中でロイを感じながら戦った。
「終わりじゃない……!
これが始まりだ!!」
光の槍が戦場を裂き、
灰の斬撃が追撃する。
二人が並んだ瞬間――
その圧は、軍勢を怯ませた。
しかし数は敵。
じわじわと包囲が狭まる。
ロイが呟いた。
「ここに長居はできねぇな。ついてこい。」
ロイはアークの腕を掴み、跳躍。
灰色の疾風となって高台へ抜ける。
追撃の刃が届かない場所まで、一気に。
◆
廃墟となった古い塔。
その最上階。
ロイに付き従う少女の姿があった。
涙が乾いた瞳。
それでもまっすぐな光。
――リリィ。
アークが息を飲む。
当たり前だ。
王都で語られる“呪いの女”その人だから。
だが。
目の前のリリィは、
誰よりも人を案じる表情をしていた。
ロイが軽く言う。
「新入りだ。よろしくな。」
アークは緊張で固まる。
そんな彼に、リリィは優しく歩み寄った。
「あなたが……アークさんですね?」
アークは驚いた。
「なぜ、僕のことを……?」
「ロイが助けた騎士さん。
“また会ったら話してみたい”って言ってました。」
リリィが微笑む。
それは呪いを打ち消すほど眩しい光。
アークの胸が熱くなる。
(ロイが……僕のことを……
話してくれていた……?)
◆
ロイは飄々と言う。
「で。お前はどうしたい?」
アークは迷いながらも、槍を握り直す。
「僕は……
あなたの剣にはなれません。
正義は……自分の意思で決めたいから。」
ロイは笑った。
「いいじゃねぇか。
盾になれ。」
アークは言葉を失う。
「俺は斬り進む。
けど時々、それが間違いかもって思う。
そんな時……立ち止まらせてくれる奴が必要だろ。」
「盾であることが、
ちゃんと“自由”であるなら。」
アークの胸に、言葉が突き刺さる。
リリィも頷いた。
「あなたが守りたいと思うものを、
好きに守ればいいんです。」
アークは感情が溢れ、叫んだ。
「僕は……僕の正義で……
ロイさんの自由を守る!!」
ロイが手を差し出す。
「よろしくな、アーク。」
アークはその手を握る。
力強く、確かな絆。
◆
だが――
塔の影では。
黒衣の斥候がその一部始終を見ていた。
「……議会に報告を。」
暗闇へと消える影。
◆
その夜。
議会では巨大な旗が掲げられた。
灰王の紋――
その上に交差する槍。
『裏切り者アーク・ヴァルディス』
イストラム議長は高らかに宣言する。
「聖騎士アーク!
貴様を、世界の敵と断ずる!!」
騎士たちが拳を掲げる。
憎悪の渦は、
新たな戦火を呼び覚ます。
◆
アークは塔の上でその火の気配を感じながら、
空を仰ぐ。
「これが僕の選んだ道……
ならば、後悔はしない。」
リリィが隣で静かに微笑む。
ロイは背を向け、
新たな戦場を見据える。
「行くぞ。
まだまだ、自由は遠い。」
灰王の旗と、裏切り者の盾。
三人の旅路が、いま本当に始まる。




