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『光翼の使命』 ◆

王都中央訓練場。

アークは騎士団《光翼》の仲間たちに迎えられていた。


「隊長!お待ちしてました!」

「灰王討伐、光栄です!」


彼らの瞳は強い信念を宿している。


アークは槍を掲げ、胸を張る。


「我らの使命は、世界を救うこと。

灰王ロイの暴虐を阻止し――

この世界に再び秩序を取り戻す!」


歓声があがる。

仲間たちは、英雄のように彼を仰いでいた。



遠征準備のため、郊外の村へ視察に出たアーク。


そこはかつて、ロイが守った村だった。

しかし、村人たちは疲れ切った表情で地に伏している。


「神の祝福が切れ、生きる術さえ奪われてしまった……」


老人の声は弱々しい。


「ロイが……神を殺したから……?」


アークの言葉に、老人はかぶりを振った。


「いや……ロイ様は、私たちを救ってくださった。

あのお方は……誰よりも優しい。」


アークの胸の奥で、何かが崩れた気がした。


「ですが……もう一度だけ……ロイ様に会いたい……」


村人たちのその言葉に、

アークは何も返せなかった。



宿舎に戻ると、

仲間の副官ラーメルが報告を持ってきた。


「村の状況はいかがでした?」


アークは言葉を選んだ。


「想像以上に……混乱している。

ロイを憎む声より、

逆に……慕う声もあった。」


ラーメルは鼻で笑う。


「洗脳ですよ。

奴は強者です。弱者は強者の後ろに隠れたがる。

だからこそ、我々が正さねばならない。」


強い決めつけ。

だが、反論できなかった。


(ロイは……悪なのか?

本当に……僕たちの敵なのか?)


迷いが胸に重く募る。



夜。


アークは一人、焚き火を見つめる。


「ロイ・アーデン……

あなたは何のために戦ったんですか?」


焦げた薪が崩れる音が響く。


震える声が、背後から届いた。


「……ロイ様は、自由のために戦ったんです。」


驚いて振り向く。

そこには、村で見たあの老人が立っていた。


「私たちが、自分の足で立てるように。

誰かにすがらずとも、生きられる世界のために。」


アークは呆然とする。


「自由のため……?」


老人は静かに頷き、

アークの胸に手を当てる。


「本当の正義とは……

誰かを従わせることではありません。

“自分を信じる力”です。」


その言葉が、

アークの心を深く突き刺した。


「……正義とは。」


考えたことのなかった視点。

その答えは――

議会の教えと真っ向から衝突する。



夜空を見上げる。


灰色の雲が流れ、

その隙間に小さく星が光る。


「僕は……何を信じれば……」


アークは槍を握りしめながら、

震えた声で自分に問いかけた。


その視線の奥には、

まだ会ったことのない灰王がいた。


――その男が、答えを持っている気がした。

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