『光翼の使命』 ◆
王都中央訓練場。
アークは騎士団《光翼》の仲間たちに迎えられていた。
「隊長!お待ちしてました!」
「灰王討伐、光栄です!」
彼らの瞳は強い信念を宿している。
アークは槍を掲げ、胸を張る。
「我らの使命は、世界を救うこと。
灰王ロイの暴虐を阻止し――
この世界に再び秩序を取り戻す!」
歓声があがる。
仲間たちは、英雄のように彼を仰いでいた。
◆
遠征準備のため、郊外の村へ視察に出たアーク。
そこはかつて、ロイが守った村だった。
しかし、村人たちは疲れ切った表情で地に伏している。
「神の祝福が切れ、生きる術さえ奪われてしまった……」
老人の声は弱々しい。
「ロイが……神を殺したから……?」
アークの言葉に、老人はかぶりを振った。
「いや……ロイ様は、私たちを救ってくださった。
あのお方は……誰よりも優しい。」
アークの胸の奥で、何かが崩れた気がした。
「ですが……もう一度だけ……ロイ様に会いたい……」
村人たちのその言葉に、
アークは何も返せなかった。
◆
宿舎に戻ると、
仲間の副官ラーメルが報告を持ってきた。
「村の状況はいかがでした?」
アークは言葉を選んだ。
「想像以上に……混乱している。
ロイを憎む声より、
逆に……慕う声もあった。」
ラーメルは鼻で笑う。
「洗脳ですよ。
奴は強者です。弱者は強者の後ろに隠れたがる。
だからこそ、我々が正さねばならない。」
強い決めつけ。
だが、反論できなかった。
(ロイは……悪なのか?
本当に……僕たちの敵なのか?)
迷いが胸に重く募る。
◆
夜。
アークは一人、焚き火を見つめる。
「ロイ・アーデン……
あなたは何のために戦ったんですか?」
焦げた薪が崩れる音が響く。
震える声が、背後から届いた。
「……ロイ様は、自由のために戦ったんです。」
驚いて振り向く。
そこには、村で見たあの老人が立っていた。
「私たちが、自分の足で立てるように。
誰かにすがらずとも、生きられる世界のために。」
アークは呆然とする。
「自由のため……?」
老人は静かに頷き、
アークの胸に手を当てる。
「本当の正義とは……
誰かを従わせることではありません。
“自分を信じる力”です。」
その言葉が、
アークの心を深く突き刺した。
「……正義とは。」
考えたことのなかった視点。
その答えは――
議会の教えと真っ向から衝突する。
◆
夜空を見上げる。
灰色の雲が流れ、
その隙間に小さく星が光る。
「僕は……何を信じれば……」
アークは槍を握りしめながら、
震えた声で自分に問いかけた。
その視線の奥には、
まだ会ったことのない灰王がいた。
――その男が、答えを持っている気がした。




