『灰王 vs 黒王』 ◆
夜空が裂けた。
黒月の王と灰王ロイが睨み合う。
世界は息を潜めていた。
風も止まり、空気すら凍る。
黒王の声が低く響く。
「選ばれぬ者よ。
その力、どこまで通用するか見せてみろ。」
ロイは灰の剣を握り直し、
不敵に笑った。
「言われなくてもやってやる。」
ドンッ!
地面が砕け、ロイが瞬間移動したかのように消える。
黒王の背後へ回り込み、一閃。
黒い剣が迎撃する。
ガァァン!!
光と闇が衝突し、衝撃波が大地を引き裂いた。
瓦礫が空へ舞い上がる。
リリィは目を覆いながら叫ぶ。
「ロイッ……!!」
◆
黒王の足元に、闇の根が生える。
「呪いとは、力ではない。
存在そのものを侵す“災い”だ。」
根が無数に伸び、ロイの身体を絡め取ろうとする。
しかしロイは叫ぶ。
「だったらその災いを……俺が使いこなす!」
灰の剣が振り下ろされ、
闇が光に焼かれて弾け飛んだ。
ロイは自身の胸に手を当て、
鼓動を確かめる。
(呪いも、自由も、全部俺の一部だ)
黒王が笑う。
「呪いに愛された者よ……
ならばその身で証明しろ。」
空から黒い隕石が降り注ぐ。
世界規模の破壊。
◆
ロイは一歩も退かずに剣を構え、
ただ一言。
「《カースリンク・オーバードライブ》」
灰の剣が巨大な斬光を放ち、
隕石ごと空を切り裂いた。
星が砕けるような閃光。
黒王が目を細める。
「ほう……ならば次だ。」
漆黒の剣が唸り、
空間を歪める。
ロイの足元が崩れ、
視界が反転する。
――精神の世界。
◆
目の前に浮かぶ光景。
倒れ伏す民衆。
ロイへ手を伸ばすリリィ。
そして、ロイ自身が刀を振り下ろす姿。
黒王が囁く。
「お前は人を救えない。
救うつもりで殺すのだ。
それこそが“呪い”だ。」
ロイの握る剣が震える。
(俺は……間違っているのか……?)
その一瞬を狙い、黒王の刃が迫る。
「終われ、灰王。」
◆
「終わらせて……たまるかよ。」
カンッ!
火花が散る。
ロイの剣が黒王の刃を受け止めた。
「俺は間違ってるかもしれない。
迷ってばっかりだ。
でもな――」
ロイは大声で叫ぶ。
「人間は迷って生きてくんだよ!!
完璧じゃねぇから!
その不完全さが――自由だろ!!」
精神世界がひび割れる。
黒王が瞠目する。
「……その言葉こそ、人の象徴……か。」
ロイは灰の剣を振りかぶり、
精神世界ごと斬り裂いた。
◆
現実に戻る。
黒王の胸元から黒い血が滴る。
「……人間の自由を語るか。
愚かな。」
ロイは肩で息をしながら、剣を掲げた。
「愚かで結構。
そっちの方が、カッコいいじゃねぇか。」
黒王は笑い、王冠を高く掲げる。
「ならば見せよう。
人間が絶望で沈む世界を。」
黒月が爆ぜ、世界中に闇の柱が伸びる。
暗黒の呪いが
全世界へ侵蝕していく。
◆
ロイが息を呑む。
(やべぇ……)
エファトが叫ぶ。
「ロイ!時間がない、決断しろ!!」
ロイは黒王を見据える。
「てめぇを倒す。」
声は震えていない。
リリィが涙ながらに叫ぶ。
「ロイ!!生きて!!
世界を敵に回しても、私は味方だから!!」
ロイは振り返り、不敵に笑った。
「当たり前だ。
お前は俺の女だからな。」
リリィの顔が真っ赤になった。
「~~~~っ!!」
◆
黒王が闇を刃とし、
最後の決戦に備える。
「来い……継承者。」
ロイは灰の剣を肩に乗せ、
前へ踏み出した。
「終わらせてやるよ――
呪いの歴史も。
英雄の歴史も。
神の歴史も。
全部な!」
灰王と黒王。
呪いと自由の戦争。
決着の時は、迫っていた──。




