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『悪としての自由』 ◆

黒槍隊長バルドルは、剣を真っすぐに構えた。

砕けた聖鎧の破片が、月明かりを反射して光る。


「世界の希望は、英雄ではない。

正義を執行できる者だ。」


ロイは鼻で笑う。


「正義ってのは便利な言葉だよな。

都合が変われば、いくらでも中身が変わる。」


バルドルは首を振る。


「違う。“誰かを救う意思”が正義だ。」


「じゃあ俺も正義だろ?

俺はリリィもエファトも守る。」


ロイが剣を掲げると、灰が空へ溶け出す。


「だが貴様は“世界を犠牲にして救おうとしている”。

それを悪と言わずして何と呼ぶ!」


ロイは一拍置き、静かに答えた。


「悪で結構。」


一瞬の沈黙。

次の瞬間——



バルドルが地面を蹴った。


灰と光が激突し、戦場が震える。

灰の剣と聖剣が火花を散らし、

衝撃で空気が爆ぜる。


「ぬあああああああッ!!」


バルドルの一撃は、

神に捧げた祈りと、民を想う気持ちの結晶。


「お前を倒せば——皆、救われる!!」


「誰が決めた、その“皆”を!!」


ロイは吠える。


「お前らが求めるのは、救いじゃない!

——依存だ!!」


衝突の衝撃波が、軍勢ごと吹き飛ばす。



リリィが両腕を抱きしめ、震える声で見守る。


(ロイ……壊れないで……

私が……守るから……!)


エファトは剣を抜きつつ呟く。


「この戦い……

どちらが勝っても、後戻りはできないな。」



バルドルが距離を取り、

満身創痍ながら剣を天へ掲げた。


「祈りはまだ死んでいない……!

聖騎士の務め、ここに果たす!!」


空気が白く輝く。

祝福が消えた世界のはずなのに——

光はまだ残っていた。


ロイは歯を食いしばる。


「正気か。神なんていねぇのに……!」


「神は死んだ。

だが、神が遺した“希望”は死んでいない!!」


バルドルの体から光が溢れる。


「命に代えても——俺は貴様を止める!!!」


その目は、涙で滲んでいた。

怒りでも憎しみでもない。


「……守りたいんだな。」

ロイは呟いた。


「だがな、バルドル。」

灰の剣を構える。


「その守り方は——間違ってる。」


次の一瞬。

二人は互いの喉元を狙い、

刃を閃かせた。


カンッッ!!!


激突。

世界が震える。



振り払われた光が夜空に散り、

灰の疾風が戦場を駆け巡る。


ロイの刃が、バルドルの鎧を貫いた。


「……く、そ、が……」


バルドルは膝をつきながらも、

ロイの胸倉を掴む。


「貴様の“正義”が……

いつか貴様自身を壊す……!」


ロイは掴まれた手に視線を落とす。


「壊れるのは俺だけでいい。」


バルドルの手が滑り落ちた。



戦場に沈黙が落ちる。


リリィが駆け寄り、涙声でロイを抱きしめた。


「お願い……もう戦わないで……

ロイは悪なんかじゃない……!」


ロイは、ぎこちなく笑う。


「悪でもいい。

悪にならなきゃ救えない奴がいるなら。」


その瞬間。


背後から、無数の槍と魔力が向けられる。


――世界はまだ止まっていない。


そしてロイの戦いも、終わらない。


「さぁ……続きをしようか。

お前らが望んだ悪は、ここにいる。」


灰王ロイ。

世界が生み出した最悪の自由。



遠い空で、黒月の欠片が輝いた。


『楽しませてくれるじゃないか、継承者よ。』


闇が、不吉に笑う。

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