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『初代灰王の誕生』 ◆

灰王グレイ・キングロイ様、バンザイ!!」

「救ってくれた英雄だ!王となるべきだ!!」


街の中央広場。

たった一夜の出来事が、民衆の認識を狂わせていた。


崩れゆく世界の中、

ただ一人“圧倒的な力”を示した男。


その偶像化は、止まらなかった。


「違うんだよ……」

ロイは頭を抱える。


あれほど拒んだというのに。

壊したはずなのに。

世界はまた「英雄」を求めている。



リリィはそっとロイへ近づいた。


「ロイはみんなを救ったから……

だから、信じたいんだよ。ロイなら大丈夫って。」


「信じるって言葉はなぁ……」

ロイは苦く笑う。


「便利すぎる。」


信じたと言いながら、

都合が変われば裏切る。

そんなことを、何度も見てきた。


――英雄失格

――王失格

――呪いの災厄


どれも同じだ。



そこへ、王国残党による“仮初めの使者”が現れる。


「ロイ殿、これを……!」


差し出されたのは、一振りの剣。

かつて王が戴いた象徴――“王位剣オーサ・ブレード”。


その刃は鈍く光り、

王家の紋は削られ、灰で塗り潰されていた。


ロイは一目見ただけで吐き気がした。


「断る。」


「ですが――!」


エファトが代わりに踏み出し、柄を掴む。


「王家を否定する象徴をよくここまで。

これをロイに差し出す意図は理解した。」


だがエファトはすぐに剣を地に叩きつけた。


「だが間違っている。“象徴”を作る行為自体がな。」


使者は驚愕する。


エファトは静かに続けた。


「ロイが灰王なら、それは新たな独裁の始まりだ。」


民衆がざわつく。


「……独裁だと?」

ロイは眉をひそめる。


「そうだ。」とエファト。

「“ロイを信じる”と言えば、考えずに従っていいと錯覚する。

それは信頼ではなく――依存だ。」


リリィの胸が強く痛んだ。


(私だって……ロイに依存してる……?)



その時。


地面が震えた。


黒灰の霧が広場中央に噴き上がる。


「──っ!!」


ロイは即座に前へ出て、《灰の剣》を構える。


霧の中心から浮かび上がったのは……


●黒い祝福の紋

●呪いと祝福の混ざった装甲

●唸る双眸


「……英雄?」

リリィが呟く。


いや――それは。


「違う。英雄の“残骸”だ。」


神造炉が崩壊し、

祝福と呪いの力が混じり合って生まれた“副産物”。


名も、意志もない。

ただ“強者を王とする”本能だけが残った怪物。


怪物は叫ぶ。


「灰王……灰王……!!

強い者が……王!!」


ロイへ向けて突進。


民衆は逃げ出し、歓声は悲鳴へ変わる。


ロイは前へ出た。


「今度は“頼られて”じゃない。

俺が選んで、斬る。」


灰の刃が、怪物の体を一閃する。


黒灰の血が散り、

怪物は崩れ落ちた。



その一瞬。


民衆は理解した。


――ロイは強い

――ロイが守ってくれる

――ロイこそ王だ


狂った結論が、さらに強まっていく。


「灰王バンザイ!!!」

「助けてくれた!!新しい世界の王だ!!」


ロイは黙って剣を握る。


本当に欲しかった未来から、

また遠ざかっていく気がした。


リリィが震えながら、彼の名を呼ぶ。


「ロイ……」


エファトが低く告げる。


「世界は、お前から主導権を奪い取ろうとしている。」


ロイは空を睨む。


「――上等だ。」


声は震えていなかった。


「世界が強制する王なら……俺が拒み続けてやる。」


灰の剣を背負い、ロイは歩き出す。


自分の意思で。

英雄でも王でもなく――ただのロイとして。



だが――遠方の闇で。


黒月の遺灰が、ひそかに脈打っていた。


「……呪いは終わらない。

英雄を廃したその男が、

いずれ“最悪の王”となる。」


誰かが笑った。


それが誰なのか、まだ誰も知らない。

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